新型コロナウィルス後遺症とは?
新型コロナウィルス感染症を発症後、PCRで検出されるウィルスが陰性になっても、継続していたり、新たに出現する症状をコロナ後遺症と定義されます。Nature medicineでは4週間以上と定義をしていますが、別な文献では発症後3週間以上と定義されていたり、4ヶ月以上長引く症状を症例報告とされていたりなど、世界各国から様々な報告がありますが、まだ定まった情報としてコロナ後遺症は定義されていないのが現状です。
このページではコロナ後遺症について説明するとともに、当院で主に行っているTMS治療、鍼灸治療、生活指導カウンセリングについて述べていきます。
症状
コロナ後遺症ではさまざまな症状が関連しており、多くの方は倦怠感、頭痛、息切れ、体の痛み、咳などがあり、一部の方には集中力低下や、ブレインフォッグ(頭に霧がかかるような症状)、耳鳴り、四肢の感覚の低下などが出る方がいらっしゃいます。コロナ後遺症についての正確なデータや診断基準などは出ていませんが、世界各国で感染後の症状をまとめた論文が出てきています。
これは、2020年にJAMAで報告された、コロナ感染症に罹患後平均60日で症状がある患者さんを集めたデータですが、約53.1%の人が疲労感、約43.4%の人が呼吸苦の症状があるという報告があります。これらのデータは日々の臨床データの積み重ねで作られていくので、2021年段階ではさらに割合が異なっている可能性もあります。
治療法
コロナ後遺症自体がまだ報告レベルであり、診断方法が確立していないように、治療方法も確立していませんが、いくつか有効であろうと言われている治療法があります。
1)漢方薬治療:当院で行っています
漢方薬は西洋薬治療と異なり、身体の証に合わせて治療をしていきます。人それぞれの体質や、心身の状態に合わせ処方していきます。疲労感が強い時は気虚の状態であり加味帰脾湯、十全大補湯、補中益気湯などの補材を使うことが多いです。
2)上咽頭擦過療法(Bスポット療法):当院では行っていません
上咽頭に塩化亜鉛を擦過する治療法です。耳鼻科で行っている治療です。東京医科歯科大学の堀口先生と大阪医大の山崎先生が1960年代に開始した治療法で、上咽頭は免疫組織の中心であるリンパ組織であり塩化亜鉛を擦過することで、後鼻漏や、IgA腎症、自律神経失調症、後述する慢性疲労症候群の治療としても使われてきました。
3)亜鉛:当院で血液検査を行っています
新型コロナ後遺症では多くの方で亜鉛欠乏症や潜在性の亜鉛欠乏が見られると言われています。採血を実施し亜鉛欠乏が見られる場合はサプリメントや亜鉛を補う薬で治療を行います。
4)TMS:当院で行っています
TMSは経頭蓋磁気刺激治療といい、2000年代から米国を中心に急速に研究、治療応用がされています。当院の医師は大学で自律神経とTMS治療について研究をしていますが、2020年にforntiers in neurologyに「Applications of Non-invasive Neuromodulation for the Management of Disorders Related to COVID-19」としてコロナ後遺症症状を改善する可能性について述べられています。
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5)鍼灸:当院で行っています
漢方薬と同じように鍼灸も東洋医学の治療法の一つです。西洋医学が原因に対し「分解」アプローチで治療を行う一方、東洋医学は一人一人の身体状態に合わせ「統合」アプローチで治療を行っていきます。補法の鍼灸を行うことで身体全体にアプローチをかけ症状をとっていきます。
鍼灸についてさらに詳しく知りたい方はこちらから
6)段階的な運動生活療法:当院で行っています
コロナ後遺症の患者様にある症状の一つにPEM(post-exertional malaise:労作後倦怠感)があります。発症前にはなんともなかった身体的・精神的活動で倦怠感が悪化する(クラッシュともいいます)症状をいい、繰り返していると、慢性疲労症候群に移行しやすくなります。そのため無計画な運動療法は禁忌であり、急激に運動負荷を上げないなどの工夫が必要と言われています。
まとめ
コロナ後遺症については現在症例報告がベースとなっており、診断基準や治療法については確立していません。しかし、過去の感染症アウトブレイク時にも同様の症状があった慢性疲労症候群に似ている病体像であることから、確立されてはいませんが治療が開始されつつあります。まだ研究段階の治療は多く、当グループでも慢性疲労症候群/コロナ後遺症対応チームを作り診療にあたっていきます。
当院での治療ケース
コラム:コロナ後遺症と慢性疲労症候群との関連
強い倦怠感が特徴のコロナ後遺症ですが、似たような概念に慢性疲労症候群というものがあります。慢性疲労症候群とは日常生活が著しく損なわれるほどの強い全身倦怠感、慢性的な疲労感が休養しても回復せず6ヶ月以上の長期にわたって続く状態です。診断を確定できる検査はなく、貧血、電解質異常、炎症性疾患、甲状腺などの似たような症状を除外し、この疲労や他の症状を説明できる他の原因が見つからなかった時に診断されます。
SEID:System Exertion Intolerance Diseaseが定義した慢性疲労症候群の診断基準では以下の3つの症状が必須条件として挙げられています。
1、発症時期が明確な慢性疲労に伴い、病前の就労、学歴、社会的、個人的な活動レベルから大幅な低下を6ヶ月以上継続して認める
2、労作後に増悪する極度の倦怠感
3、睡眠障害(熟眠感、回復感を伴わない睡眠)
また以下の2つのうちいずれかの症状を認めることも診断基準になります。
1、認知機能の低下
2、起立性調節障害
原因としては、遺伝的素因、感染症の暴露、身体的・精神的ストレスなど複数の要因があると言われており、こちらもまだ解明しておりませんが、20世紀を通じて感染症のアウトブレイク後に慢性疲労症候群様の症状はコロナ後遺症だけでなくたびたび報告されてきました。
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