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不安とは
不安は、誰もが感じる身近な感情です。例えば、大きな発表の前、人の前で話すときや試験を控えているときに感じる方も多いのではないでしょうか。
多くの場合、不安はネガティブな感情であると認識されます。
しかし、ネガティブな感情も生きるために必要なため備わっているものです。
それは、このままではいけないということを直感的に教えてくれています。
危ないかもしれない、何かが起きるかもしれないと先のことを考えることにより突然のことへ対処できるようにしています。
もし、不安がなければ危険に対処することができず生き延びることができないでしょう。
そのため、必要な不安と自分が過剰に生み出している不安を識別することが大切です。
過度の不安を長期的に感じると体調が悪化してしまいます。
さらに悪化すると、適応障害、不安障害、大うつ病性障害などの精神疾患になっていくこともあります。
仕事の不安を感じる人は働く人の約6割もいる現状
令和2年の厚生労働省の労働安全衛生調査によると、現在の仕事や職業生活に関することで強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は54.2%でした。
現代は、テクノロジーの発展により「VUCAの時代」と呼ばれています。VUCAとは、V(Volatility:変動性)、U(Uncertainty:不確実性)、C(Complexity:複雑性)、A(Ambiguity:曖昧性)の頭文字を取った造語です。
このような変動的で将来の予測がつかない時代により、仕事の不安を感じる人が少なくないのです。
仕事の不安を感じる4つの原因とは?
当院に来院される方々の中で仕事の不安を感じる状況としては以下4つの状況が特に多いです。どれもが単体で不安状況としてあるのではなく、関連していることが多いと思います。自分にはどのような状況が当てはまるのか、読みながら考えてみて下さい。
1.自分に自信がない
多くの社会人が、仕事に対して自信がないと感じていると思います。仕事に対して自信がないと感じると「自分はこれでいいのだろうか」、「自分は・・・では」という様々な考えが浮かび不安につながりやすくなります。
自分に対する様々な考えは、完璧主義であると浮かびやすくなります。
全てを完全に行おうと考えていると、自分自身に求めることも自然と高くなります。
自分が設定したハードルが高くなった分だけ、超えづらくなってしまいます。
そうすることで「自分はできない」という失敗体験が増えていきます。
この失敗体験が自信のなさにつながっていきます。
2.期待されることにプレッシャーを感じる
自分ができると思っている課題については、不安に感じることはありません。
課題の難しさが自分のできると思うレベルを越えた時に不安を感じます。
課題が難しいと思った時に「自分にはできそうにないことだ」、「求められたことだから答えないといけないけど、本当はできそうにないしやりたくない」と思います。
その感じたことを一言で表すと「不安」という感情になります。
また、周囲からできると思われている状況も不安につながります。
周囲の期待と自分のできると思うレベルに差があるとプレッシャーを感じます。
「周囲の期待にこたえなければいけない」、「失敗したら上司に怒られるんじゃないか」という思いが生じたとき、高いハードルのように自分には越えられそうにないと思うことで不安に感じます。
3.人間関係がうまくいかない
これは人類の永遠の課題かもしれませんが、職場のストレスで最も多いのは人間関係についてです。職場の人間関係のストレスの多くは、自分と相手との間の考え方、認識、伝わっていることにズレがあると生じやすくなります。
しかし、職場は家族と違い多種多様の人たちが集まっている集団なので、実際はわかりあえていないことがほとんどです。そのため、期待を裏切られたと感じてしまうことで、人間関係がうまくいかなくなることが多いようです。
また、人間関係には互恵性があるので、相手にネガティブな感情を抱くと、相手からもネガティヴな感情を受け取ることが多くなります。この悪循環が起きると、人間関係がストレスフルになったまま継続してしまいます。
4.将来への不安を感じる
キャリアというと、一般に仕事や経歴、出世などのイメージを持つ方が多いと思います。ここでのキャリアとは人生を指す幅広い視点になります。
そのため、今の職場で働き続けるのか、スキルアップを目的に転職活動を行うのかという仕事に関連した不安もあれば、結婚や出産、育休の取得など家事育児の両立もキャリアの不安になります。
今日から始めよう! 仕事の不安を解消する具体的な対処法4選
必要な不安と、自分が過剰に生み出している不安を識別して、不安に適切に対処することが大切です。
不安は危険信号であり、なくすことはできませんので、抱えられるレベルに抑えていくことが不安の対処の目標になります。先述した状況に合わせて、対処法をご確認ください。
1.紙に書き出して冷静に判断する
将来に対する事柄は、何が起きているかわからない状況で不安を感じます。
曖昧で「もやっ」としたネガティヴ感情を明確にしていくことで、抱えやすいストレスにしていくことができます。
そのためには、自分の不安などの感情を言葉などでラベリングしたり、ストーリーにしていくことが有効です。
紙に書き出しながら自分と対話してみましょう。
自分の感情、思考、周囲の状況を上から見下ろす感覚で、起きていることの全体像を整理してみましょう。
このような不確実性の時代でのキャリアの考え方に「計画された偶発性」という考え方があります。
ここでは、キャリアは計画できるものではなく偶然に影響されることが多いものであるとしています。
ただし、偶然ではあるが確率を高めることはできるという考え方です。
そのためには、将来のプランを決めつけず、偶然が起きた時のために準備をしておき、偶然が起きた時はそのチャンスをつかもうという考え方です。
このような考え方をすることで、不安を抱えながらも、今必要な行動ができるようになるかもしれません。
2. 自己分析をして得意分野を見つける
自分ができると思っている以上のことを求められていると感じるときは、自己分析をすることをお勧めします。
ストレスフルな状況になると視野狭窄状態になり、新しい視点や自分に対する認識が見えなくなります。
そのため、時には気分を変えて客観的に自己分析をして、得意なことを見つけていくことも重要になります。
それにより今後の見通しがもてるようになり、次にするべき行動も見えてくると思います。
得意分野を見つけただけでは一時的な不安解消になりがちです。
得意分野をみつけモチベーションを確保し、少しずつ行動し成功体験を積んでいくことも大切です。成功体験というエビデンスを積むことで確固たる自信になります。
3.誰かに相談してみる
人間関係がうまくいかず不安に感じている場合は、アサーションなどのコミュニケーションスキルが有効です。
互いに率直に伝えあい、違いについて折り合いをつけていきます。
日本では、察することがコミュニケーション力だと考えていた歴史はありますが、現代は、個別性を重視する時代になっています。
個別性が高いということは伝え合わないと理解できないということです。
コミュニケーションスキルも時代の変化に合わせ変化させていくことが大事だと思います。
また、ソーシャルサポートを得ることで不安に対処することも大事です。
ただ、気持ちを聞いてもらいたくて相談したのに、アドバイスされて傷ついた経験を持つ人は多いと思います。
ソーシャルサポートには、道具的、情報的、情緒的などの種類があります。
直接、課題を解決してくれるのが「道具的」、解決の情報を得るのが「情報的」、課題は解決しないが気持ちを軽くしてくれるのが「情緒的」です。
全部の種類のサポートを一人から得ることは難しいです。
まずは、今、自分がどの種類のサポートを得ようとしているのかを明確にし、それに適した相手に相談することが大切です。
4.仕事の以外の楽しみを見つける
自信がなく、不安が高い時に大切なのは不安の悪循環を作らないことを目標にすることです。
不安に注目すると不安になってしまうため、不安をなくそうとすると逆に不安が強くなり、不安な状態が持続してしまいます。
森田療法ではこれを精神交互作用と呼んでいます。
この悪循環から抜け出すには、不安以外のことに注目することが有効です。
仕事以外の楽しみがある人は、その楽しみに注意を払うことができるので、不安の悪循環を解消しやすくなります。
現実的に出来ることと出来ないことを見極め、できることを実行していくことで、適切な不安にとどめられるようになると思います。
また、課題に対して「何とかなる」と思えるようになるには、簡単過ぎることと難しすぎることの間の、少し頑張ればできることに対して成功体験を積んでいくことが有効です。
仕事の不安を感じたら自分で解消法を見つけよう
不安は、ネガティブなものであると考えられがちですが自分が危険を感じていることを知らせてくれる信号であるためなくすことはできません。
多くの社会人が感じている仕事への不安は、まずはその不安の中身を明確にしていくことが有効です。
必要以上に不安を感じていないか、自分の中でどんな危険信号を教えてくれているのか、その不安状態を把握するよう努めてみてください。
不安を適切に感じ、適切に対処していくことで不安を抱えらえる状態にしておくことが大切です。
一人で対処をしないとと思わず、周囲のサポーターや医療機関への相談もその対処法の一つとして考えてみてください。
それでも一人で抱えきれないような不安を感じられた際には、ビジネスの不安にも強い心療内科であるベスリクリニックに一度ご相談ください。