新しい生活様式の課題 テレワーク時代の睡眠の質の改善法

新型コロナウイルス流行に伴い、テレワーク・リモートワークが導入された方も多いのではないでしょうか。
緊急事態宣言は解除されましたが、厚生労働省から発表された「新しい生活様式」のため今後さらにテレワーク・リモートワークの割合が増えていくことも考えられます。
そこで今回は在宅ワークへの転換で起こりやすい問題と、その対処方法についてお話していきます。


テレワークによる生活リズムの変化

在宅ワークでの変化として大きいのは、通勤時間がなくなるということではないでしょうか。
普段であれば出社に間に合うように起床し身支度をして駅まで歩き…といった時間がありますが、在宅ワークの場合はそれが不要になります。
在宅ワークになったので、いつもより朝寝坊をしたり、出社と在宅の日で起床時間が大きくずれたり、という方も多いのではないでしょうか。

生活リズムを整えるホルモン①メラトニン

ヒトの体内時計は24時間より長い、という話を耳にしたことがあるでしょうか。
ヒトの体内時計は24時間よりも長い周期でできているため、少しずつ遅寝遅起きのリズムになっていってしまいます。
そのサイクルを調整して24時間に合わせる働きをするのがメラトニンというホルモンです。
メラトニンは光に反応するホルモンで、明るくなると減少し目が覚めてきます。逆に暗くなるとメラトニンは増加し眠くなってくるという仕組みです。
起床時に明るくしてメラトニンをしっかり減らせていると16~17時間後に自然な眠気が生まれ、睡眠の質を向上させることができます。

メラトニンのコントロール法その1

在宅ワークになると外出する機会が減り、家の中で過ごす時間が増えてきます。
メラトニンを減らすには、2500~3000ルクス以上の明るさを脳に届ける必要がありますが、室内の明かりのみだと一般的に500~1000ルクス程度となり、はっきりと脳に「朝が来たな」と伝えることは難しいのです。一方で太陽の光にあたると、晴れた日なら15000ルクス以上の明るさになります。
光の感受性が最も高いのは起床後4時間以内と言われています。
在宅ワークでも十分なパフォーマンスを発揮するには、「起床4時間以内に光を浴びる」ことでメラトニンリズムを調整するということが重要なのです。
具体的には、起床時にベランダに出る、朝に散歩に行く、一度起きてカーテンを開けた窓際で二度寝する、などがおすすめの方法です。

メラトニンのコントロール法その2

メラトニンを使って体内時計を調整する方法をお話ししましたが、パフォーマンスをしっかり発揮するためにもう一つ重要な点が、「起床時間を一定にする」ということです。
今回の緊急事態宣言のように、長期に休みとなったり出社・在宅がコロコロと変わったりすると起床時間が日によって大きく異なる生活リズムとなる場合があります。
こうなると出てくる問題として「朝起きられない」「仕事に意欲がわかない」ということが挙げられます。皆さんも休み明けの月曜日の朝や年末年始明けなどで似たような経験をされているのではないでしょうか。

生活リズムを整えるホルモン②コルチゾール

起床時間になったら目が覚めるようにプログラムをしているのは、コルチゾールというホルモンです。
コルチゾールは起床の目標時間に向けて徐々に量が増えていき、起きやすい体に調整していきます。
前日起きた時間よりも早く起床しようとすると、まだ起床の準備ができておらず、慌ててコルチゾールを急上昇させてしまいます。コルチゾールは体にストレスをかけることで起床準備をしています。コルチゾールが急上昇すると、ストレスが過剰にかかることになるので気分の落ち込みや意欲低下など、うつ病と似た症状がでることがあります。
これが「朝起きられない」「仕事に意欲がわかない」正体です。
意欲を出すか出さないかは残念ながら自分でコントロールすることはできません。その代わり、何時に起きるか・起きたらどうするかなど、自分の行動を変えることを目標に設定してみましょう。

まとめ

  • 起床後4時間以内に光を浴びる
  • 起床時間を一定にする
  • 意欲を出すのではなく、行動を変える

ベスリクリニックでは、睡眠リズムを「見える化」して、その人にあった睡眠の改善法を一緒に考えていきます。パフォーマンスが落ちたなあと感じたら、まず、睡眠を軸にした行動変化を起こすことをやってみましょう。

  公認心理師 蓮見 紋加