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【仕事で緊張しすぎてしまう】不安障害とは
不安障害とは、不安を主症状とする精神疾患の総称。代表的なものとして、パニック障害、社会不安障害、強迫性障害などがあります。
強い不安や緊張を感じ、身体症状があらわれることもあります。職場においては、過去の失敗経験やパワハラなどによるトラウマ、成果や評価に対するプレッシャーなどが要因となり症状としてあらわれ、会社へ行けなくなる、集中力の低下、パニック、言葉が出なくなるなど、仕事への支障が大きくなります。
一時的な不安や恐怖を感じるのは自然なことですが、状態が長期間続くなら要注意です。
【仕事で緊張しすぎてしまう】不安障害を発症しやすい人とは
こだわりが強い、頑固で負けず嫌い、理想が高く完璧主義、他人の目を気にする、敏感で気を遣いやすい(HSP気質)、NOと言えない(嫌われたくない)、マイナス思考など、強気な側面がある一方で、神経質で繊細な部分も同じように持ち合わせている人が発症しやすいと言えます。
理想と現実のギャップが生じやすく、心の葛藤が大きくなることで、ずっと力を抜くことができない状態であるからです。
また、一つや二つの出来事だったり、一度や二度の誰かの言葉に対して、全てがそうだ、これからも全部そうなる(ものごとの一般化)と思い込んでしまう傾向が強い人も、緊張や不安をより一層強めてしまうため発症しやすくなります。
【仕事で緊張しすぎてしまう】不安障害が仕事にもたらす影響とは
仕事をするうえでは他者とのコミュニケーションが大切になります。
過度な緊張と不安から言葉につまり人前でうまく話せなくなると、業務上の問題が色々と発生してしまいます。
上司や同僚など、周りの目が気になって悪い妄想がどんどん膨らんでしまうようになり、仕事にも集中できなくなります。
すると本来の力を発揮できずにパフォーマンスが低下することになり、更に周りの視線が気になって緊張や不安が強まるという悪循環に陥ってしまいます。
次第に不安や恐怖からの回避行動があらわれ出して、人が集まる場所を避け、会議や会社を休んだり、酷くなると、会社へ行くことが難しくなってしまいます。
人前で話せない
会議や朝礼などの社内発言の場や、電話や急な来客への対応、客先での打ち合わせやプレゼンの場面などで、言葉につまり話せなくなったり、動悸や過呼吸発作などの身体症状が出る場合があります。
営業やプレゼンにおいては成果に影響が出てしまいますし、雑談が苦手だと、社内コミュニケーションの場が苦痛になります。
電話恐怖症や朝礼のスピーチが嫌で会社を辞めてしまう人も少なくありません。話せない自分に対しての自己嫌悪が強くなり自己肯定感も下がってしまいます。
周りの視線が気になって集中できない
不安障害のある方は職場での周りの視線や反応に対して敏感で過剰に反応してしまいます。
そのため、失敗した場合に周囲からどう思われるだろうか、自分の発言が良くなかったのではないか、評価に影響しないだろうかなどの妄想が働き、言葉につまったり、行動も消極的になり、仕事へ集中できない状況になってしまいます。
電話対応が上手くできない
緊張のあまり声が震えたり、流暢に話せない、電話にすら出られなくなる場合もあります。
昨今ではメールやチャットなどの利用が当たり前となっていますが、電話対応の場合は、考える時間が短く、短いやり取りのなかで情報交換をしたり相手に失礼のないように対応しなければいけないというプレッシャーがあり、より緊張度が高まります。
周囲の状況が静かだったり、自分の電話対応を他の人に聞かれていると思うことでも緊張や不安が高まります。
電車やバスに乗れない
不安障害のある方は過去に緊張してうまく振舞えなかったり強く嫌な思いをした経験があると、失敗や過去と同じような場面への妄想から予期不安が芽生えます。
すると会議への参加を避け、会社を休んでしまうという回避行動をとるようになったり、パニック障害や広場恐怖症がある場合、交通手段での移動を避け、会社へ行けなくなってしまうことがあります。
【仕事で緊張しすぎてしまう】不安障害の治療方法
精神療法
精神療法では、不安や恐怖、回避行動の原因を確かめながら、考え方や行動を変えていけるように働きかけていきます。
代表的なものとしては、認知行動療法、森田療法、タッピング、NLPなどのアプローチがあります。
何よりも大事なことは、改善への取り組みを少しずつでも実践し継続していくことです。
現在の思考の癖や行動パターンがそれなりの時間をかけて培われたのと同じように、適切な方向へと改善していく過程も同じように時間を要します。急いだ解決を求めると再発しやすくなりますので、焦らずにゆっくりと自分自身に馴染ませていくことがポイントになります。
CASE 1. 30代男性 製造業
仕事でのミスを上司に叱責され「また失敗したらどうしよう」「また怒られるのではないか」「自分には能力がないのではないか」という不安が強くなり会社へ行くことへの緊張と不安が強くなりました。休職はせずに、働きながらの治療を開始。
元々のマイナス思考傾向と自信の低下による自己肯定感の低さへのアプローチとして、フォーカスする先の意識を変え、出来事への捉え方を変えるトレーニングを実施。
取り組みを継続していくうちに、以前と同じような場面や、同じような言葉を受けても、落ち込みすぎずに気持ちを切り替えることが出来るように変化しました。
CASE 2. 20代女性 新入社員(マーケティング)
新卒で入社し研修が終わり業務を任されて進めていくうちに、他の同期や周りの目、自分の業績や評価がもの凄く気になるようになった。
また入社当初の理想と現実のギャップも感じはじめて、仕事への集中力や気力が薄れ、涙が出る、動悸がするなどの身体症状があらわれ業務困難な状況になり受診。
いつの間にか自分軸を見失い、他人軸、他者の期待に応えることが中心になっている状態を整えていくアプローチを実施。自分の役割や現状への捉え方や認識が変わり、気にしていたことが気にならなくなり、仕事への意欲もアップした。
CASE 3. 40代男性 メーカー企画営業
元々プレゼンに対する苦手意識が強かったが、あるプレゼンでのつまずきがトラウマとなってプレゼンへの不安と恐怖心が強まり、プレゼンの機会が訪れるたびに、動悸、吐き気、声や手の震えなどの身体症状、言葉につまる、頭が真っ白になるという状態に困り受診。
呼吸法などのリラクゼーション法に加え、見る意識と見られる意識という緊張のメカニズムを踏まえたアプローチを行い、プレゼン時における意識改革を行った結果、緊張はするものの、話せなくなったり、異常な身体症状が出るなどの過度な緊張や不安は軽減した。
【仕事で緊張しすぎてしまう】不安障害のすぐできる対処法
不安は漠然と感じているほど大きくなります。目に見えないものや正体のわからないものに対しては恐怖心が強くなるからです。
それを踏まえたうえでの実践しやすい対処法があります。また生活習慣を見直し整えることから始めてみることも有効です。
自分がリラックスできる方法を複数持っておくことも、お守り代わりとして安心感を与えてくれます。
不安を可視化する
感じている不安を付箋に書き出して見える化してみる。
そこから自分でコントロールできるものか、自分ではコントロールできないものかを仕分けし、自分でコントロールできるものの中から、まず対応しやすいターゲットを絞り込んで対応します。
漠然とした不安を感じている意識状態から、やるべきことへ向かう意識状態へと変化し不安の軽減へと繋がります。
食生活などの生活習慣を改善する
食事や睡眠などの生活リズムの乱れは心身の調子を崩す原因となり、不安や恐怖に対する抵抗力の低下を起こします。
健康的な食事、十分な睡眠、適度な運動などが、不安や恐怖への抵抗力アップへとつながるため、普段から食事内容や睡眠時間の意識を高めて、健康的な生活習慣を心がけておくことが、不安症状を未然に防ぐことへとつながります。
リラックスできる方法を身に付ける
呼吸法
呼吸を意図的にゆっくりと深く行う。吐く方を意識して吐き切ることがポイントです。
4・4・8呼吸法(カウント呼吸法)というものもあります。
4秒鼻から息を吸う→4秒止めて→8秒で鼻から息を吐き切る。これを4~5回繰り返す。
筋弛緩法
筋肉を意図的に緊張させてから緩めることで、心と身体をリラックスさせる方法です。
軽く体を動かしてみる
ドキドキするなどの身体症状を逆に利用する方法として、あえて軽く体を動かして心拍数を上げることで、運動によるドキドキと精神的なものによるドキドキを混同し錯覚させて、不安や緊張を和らげる方法もあります。
イメージ療法
不安をイメージ化して、そのイメージを自分が安心できるものへと変えてみる方法です。
色や形、質感や温度などのイメージを変えて不安や緊張を和らげます。
アンカーリング
自分が安心したり集中できる動作やポーズなどをあらかじめ決めておき、気分を変えるキッカケにする方法です。
イチロー選手やラグビーの五郎丸選手などもその一例です。
五感を刺激する安心グッズを携帯する
落ちつく香りがするもの、喉や胸のつまり感を和らげるようなスーッとする飴や飲み物を用意しておく。
気分を変える写真や言葉、気が紛れるような音楽などを常に携帯しておく。
いくつかの参考例をご紹介しましたが、自分をリラックスさせる方法を身に付けて備えておくことは、不安障害のある人には大切なこととなります。
まとめ
不安障害とは、不安感に歯止めが利かなくなり、身体症状が引き起こされる疾患です。
社会生活を送る中では、人前で話せなくなる、視線が気になって集中できなくなる、電話にうまく出られない、公共の場を避けるようになるなどの不都合が生じます。
薬での治療の他、精神療法や心理療法も効果的とされています。
不安を書き出して可視化する、不安になりにくい食事を心がける、呼吸法や筋弛緩法などのリラックス法を習得するなどによって、不安に左右されないメンタルを作ることができます。
不安障害かどうか診断してもらいたい方、不安を和らげる手助けやアドバイスをご希望の方は、一度ベスリクリニックまでご相談ください。