人の目が気になる不安は『社交不安症』かも!治療や日常生活の過ごし方

人の目が気になって、緊張しすぎたり、動機や冷や汗などの症状があったりしませんか。症状があるために日常生活に影響がでていたり、自分のせいと思い込んで苦しい思いをしてしまうこともあります。そんなときの対処法をご紹介いたします。

人の目が気になる不安は『社交不安症』の可能性あり

人と関わる時、相手の目が気になる、ひいては相手に悪く思われることが怖い、不安ということは誰にでもありますが、その恐怖や不安が耐えがたいほど強い場合は、社交不安症の可能性があります。

社交不安症とは

社交不安症とは、人にどう見られているか?どう思われているか?を、必要以上に気にしてしまう症状です。
ご本人は、自分は自意識過剰なだけと思われるかもしれませんが、人の目が気になり、つらい気持ちが日常生活に支障をきたすほど強い場合は社交不安症かもしれません。

社交不安症の症状とは

精神的な症状と身体的な症状、二次的な症状に分かれます。

①精神的な症状
人と関わる場面、人前で何かをする場面で、強い不安や恐怖、緊張感を持ちます。
かつ、自分の不安や恐怖、緊張が、人に伝わること、気付かれることを恐れます。

②身体的な症状
冷や汗が出る、鼓動が早くなる、息がしづらくなる、腹部に鈍痛や不快感がある、手足が震える、スムーズに話すことができなくなり、時には声が震えたり、言葉が全く出てこなくなる。

③二次的な症状
①②の症状が出ることを恐れ、人と関わる場面を避ける、時には家から出られなくなる。
①②の症状を抑える、まぎらわすために、アルコールや甘いもの、ネットサーフィンやゲームなどに依存する。

例えば、具体的には下記のような例があります。

初対面の取引先の人に挨拶をする際、ものすごく緊張し、冷や汗が出たり、動悸がしたりする。

職場の休憩室で、周りの人にどう思われているか?気になり、その場にいるのがいたたまれない。

人前で、書類に記入する時に、相手にどう思われているか?気になり、手が震える。

犬の散歩中、近所の人たち数人が雑談している前を通るだけで、過度に緊張し動きがぎこちなくなる。

一人で居る時も、上記のような症状が出たら、どうしよう?と不安になり、人と接することを避けるようになる。症状が強い場合は家から出ることができなくなる。

社交不安症チェックリスト

以下のような場面で、不安や緊張、恐れを感じますか?

  • あまりよく知らない人と目を合わせる
  • 電車の中で知らない人と目が合う
  • あまりよく知らない人と話す
  • あまりよく知らない人に電話をかける
  • あまりよく知らない人がいる中で勉強や仕事をする
  • あまりよく知らない人がいる中でお茶をしたり食事をする
  • 人が話している中に入っていく
  • 初対面の人と会う、挨拶をする
  • 人前で字を書く
  • 人前で注目を浴びる
  • 会議で意見を言う
  • 上司に報告をする
  • 試験や面接を受ける
  • 人と接することを考えだけで、不安や緊張を感じ気が重くなる
  • 人と関わることへの不安、関わった後での緊張をやわらげるために、アルコールや甘いものをたくさん摂る

早めの受診が大事です

上記チェックリストに当てはまる症状があり、日常生活に支障が出ていると感じたら、早めにメンタルクリニック等を受診しましょう。
社交不安症の症状をお持ちの方は、自分がそのような不安や恐怖を持っていることに引け目を感じ、人に知られたくない、知られること自体が恥ずかしい、自分一人でなんとかせねばなどと思う傾向があります。
社交不安症の症状をお持ちであることは、決して恥ずかしいことでも、自分のせいでもありません。
メンタルクリニック等を受診し、医師やカウンセラーに適切なケアを受けることは、人と関わる際の不安や恐怖をやわらげ、ラクに生きることの助けになってくれます。
早めに受診することで、回復までにかかるケアの時間も短くなり自分の負担が減りますので、早めの受診をおすすめします。

人の目が気になる不安を解消しよう

一人で抱え込まず専門家に相談してみましょう

社交不安症の症状で悩んだ時は、精神神経科や心療内科を受診し、専門家に相談してみましょう。
専門家に相談して、適切な治療を受けることは大きな助けになります。
治療方法としては大きく分けて2つあります。
①薬物療法
人の目が気になるつらさ、人と関わる際の不安感をやわらげるため、よく処方される薬は、抗うつ薬の一種であるSSRIです。
SSRIとはSelective Serotonin Reuptake Inhibitor(選択式セロトニン再取り込み阻害薬)の略で、脳内ホルモンの一つ・セロトニンの再取り込みを阻害します。 
その結果、セロトニンの働きを強めるなどして、うつや不安を改善すると考えられています。
※セロトニンには、ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用があります。
主な副作用として吐き気、眠気がありますが、服用し続けていくうちに慣れていくこともあります。
副作用が気になる場合は、医師に相談しましょう。

最近では、漢方薬を処方してくれるメンタルクリニックもありますので、不安をやわらげる作用のある漢方薬やホルモンバランスを整える漢方薬などを処方してもらうのも良いでしょう。

②精神療法
思考のクセや思考パターンを変えていくことで、人と関わる際に、人にどう思われるか不安である、人の目が怖い、人に悪く思われるのが怖いという気持ちをやわらげていきます。
社交不安症の症状で悩んでいる方は、自分でも知らず知らずのうちに、他人や自分に対して、もしくは一つの出来事に対して、偏った考え方や捉え方(自動思考)をし、そのことが原因となって、不安や緊張感、恐れが強くなっています。
例えるなら、自分でも気づかないうちに、自分特有の色のついたメガネをかけて、他人の言動を見ていることがあります。
ご自身の社交不安症の症状について、臨床心理士やカウンセラーなどに話すことによって、この自分特有の色のついたメガネに気付き、それを少しずつ外していくことで、症状がやわらいでいくことがあります。(認知行動療法)

また社交不安症の症状で悩んでいる方は、症状が出そうな場面(不安や緊張が強まりそうな場面)を避けがちですが、そういった場面を避けることで、ますます不安や緊張、恐れが強まるという現象が起こります。
そのため、自分が不安や緊張、恐れを感じる場面に、敢えて身を置き、段々と慣れていくことも有効です。(暴露療法)
この療法では、まずはハードルの低い、一番不安が少ない場面から取り組み、徐々にハードルを上げていきます。

人の目が気になりつらい時、日常生活の中でできる工夫やセルフケア

自責をやわらげる

人の目が気になる方のお話を伺っていると、自分を責める気持ちが強い方がほとんどです。
自分を責める気持ちが強いと、周りの人も自分を責めている、悪く思っていると思いがちになってしまいます。
そうすると、ますます人の目が気になり、人前で何かすることへの緊張感や不安、恐れなどが強くなってしまいます。

自分を責める気持ちをやわらげると言っても、なかなか一筋縄では行かないかもしれません。
人の目が気になってしまう自分がダメだというのは事実であり、私は特に自分を責めてはいない、単なる事実を言っているだけに思えるという方もいらっしゃいます。
自分を責めているということには気づいているけれども、どうしても止めることができず、「どうして自責を止めることができないんだろう」と、さらに自分を責める気持ちが強まる方もいらっしゃいます。

まずは自責を完全に止めることを目標にするのではなく、少しずつやわらげることを目指して、「私はそこまで悪くない」と自分に言ってみましょう。
「私は悪くない」という言葉はなかなか心に響かないけど、そこまでという言葉を付け足して、「私はそこまで悪くない」というと、確かに自分は必要以上に自分を責めていると気付いたという方も多いです。

自分に対してねぎらいの言葉をかける

社交不安症の症状で悩んでいる方は、人と関わる時に非常に頑張っていらっしゃる方が多いです。

上手く話そう、
なるべく感じ良く接しよう、
相手に変に思われてはいけない、

さらにお話を伺うと
人と接する時に頑張らないと、その場に居ることができないなどと思っていらっしゃる方もいます。

その意気込みがプレッシャーに転じて、そのプレッシャーで緊張したり、不安や恐れを感じる。
そんなことが往々にして起こっています。

自分に対して、下記のようなねぎらいの言葉を掛けてみましょう。
「人前で何かする時、上手くできるよう頑張っているんだね。」
「人と話す時、感じ良くしないといけないと思っているんだね。」
「そんな風に思っていると、いつも力が抜けなくて、きついよね。」

プレッシャーを感じている自分の気持ちを認めると、それだけで少しずつ心も身体もゆるんできます。

しっかりと睡眠をとる

睡眠は身体だけではなく、心も休めます。
寝る前は、なるべくスマホを見ないようにするなど、ぐっすり眠れるような工夫をしましょう。

人の目が気になる不安を解消しよう

人の目が気になるという気持ちが強く、汗をかく、呼吸が苦しくなる、手が震えるなどの症状が出る、人と接することを避けるなど、日常生活に支障が出る場合は、早めの受診を心がけましょう。
専門家に適切なケアを受けることが早期の回復につながります。
専門家によるケアと同時に、社交不安症の症状が出ている自分を責めないで、自分をねぎらう、しっかり睡眠を取るなど、自分でできるケアも取り入れていきましょう。