新型コロナウイルスの流行以降、日常的にマスクをする生活が定着してきました。日本ではインフルエンザや花粉症の時期に着用することは以前からありましたが、みんながマスクをしている状況にコミュニケーションのとりづらさを感じたことはないでしょうか。
マスクの着用により口元が見えなくなることの影響
マスク着用により、まず考えられる影響は、話していることがわかりづらくなることです。マスクで口が覆われて声が通りにくく口が動かしづらい他、相手の口の動きも見えないため憶測でなんとなく聞いてしまうことや、自分の言っていることが伝わっているのか不安が伴うこともあるでしょう。
他の影響としては、口角の上がり下がりが見えなくなることで表情が読み取りづらくなることです。人が持つ相手への認識能力は、表情(見た目)と言葉の認識が一致しない場合、見た目の情報の方が優先される特徴があります。言葉では伝わっていても、見た目で不安感を与えてしまうと意図と違った印象を与えてしまうかもしれません。
それではどうやったら、マスク着用でも印象を変えることができるでしょうか
マスクをしていても印象をよくする方法その1・・・話し方の工夫
マスクにより声がこもってしまうため、話すときに気を付けるポイントが3つあります。
いつもより大きめの声で話すこと、ゆっくり話すこと、リズムや抑揚を意識することです。
印象が良くなるだけでなく、コミュニケーションも取りやすくなります。声の大きさは話し相手に合わせて意識しなくても調整していますが、マスクをしているとつい早口になる傾向があります。長い説明をするときなどは途中で一呼吸置き、スピード感を調整する習慣などをつけるといいでしょう。
その2・・・表情の工夫
表情は主に口元や、眉の動き、目元から認識します。喜びや笑顔の認識は口角が上がっていることと目元の動きの影響が大きいです。マスクで口元が隠れるため、笑顔を認識するには特に下瞼の動きがポイントになります。しかし、意図的に下瞼だけを動かすと不自然になるため、マスクでみえていなくても口角を上げて笑うことで自然に下瞼も動きます。
その3・・・見た目の工夫
視覚的な情報を強める方法として、いつもより大きめに頷くことやジェスチャーを交えるとより効果的です。座っているときはより頷きが小さくなりやすいため、体動かすイメージで頷くことで伝わりやすくなります。
他にも、マスクの色も相手に与える印象に影響します。近年、黒や濃いグレーなどのマスクがファッションとして流行っているため、街中でもよく見かけるようになりました。しかし、黒いマスクよりも白いマスクの方が印象がいいという最近の研究結果があります。また、薄ピンク色などの血色がよく見える色も好印象を与えるようです。不織布マスク以外にも手作りマスクなどが流行っているため、選択肢が増えていますが、相手に与える印象も考えながら選ぶといいでしょう。
臨床心理士・公認心理師 泉本まり子