働く人の適応障害(適応反応症)とは?
働く人の適応障害は、昇進・転職・配置転換など環境の変化や求められる役割の変化にうまく適応できず、仕事にも心身にも影響が出る状態をいいます。
頭が働かず業務に支障が出る、不安、落ち込みや過緊張など心身の症状があらわれ仕事だけでなく、生活にも支障が出ることが多いです。
適応障害の症状セルフチェックリスト
身体症状
- 疲れやすい
- うまく眠れない(不眠)
- 吐き気や動悸
- 涙がとまらない
- 過緊張・肩こり・頭が重い
脳の症状
- 頭にモヤがかかる(ブレインフォグ)
- 集中力・思考力の低下
- 文章を何度も読み返す
こころの症状
- 落ち込みやすい
- 不安が強い
- 焦りやイライラ
適応障害になるのは「甘え」や「わがまま」ですか?
適応障害になる人は、自分が最大限できることを努力し続ける真面目な人が多いです。
周りの人に迷惑をできるだけかけないように一人で考え込んだり、自分を追い込んで視野が狭くなってしまい不調のループに入ってしまいます。
「人に頼ったほうがよい」、「抱え込みすぎないようにしたほうが良い」ことはわかってはいるけれど、一人で背負い続けてしまうという真面目で誠実な人が多いです。
適応障害になる人は「甘え」や「わがまま」な人ではなく、人生の中で適切なタイミングに「助け」を求めづらい経験をつんできた人や、自分のキャパシティ以上に頑張り続けてしまう人です。そのため、適応障害の治療はただ環境調整を行ったり、薬物療法を行ったりしても、「性質」としてまた繰り返してしまう可能性が高いです。
治療の際には、冷静に自分を見つめなおし、今後同じようなことが起きた時にビジネススキルとして再発予防のスキルをつける「ビジネストレーニング」を行うことが重要です。
ストレスから離れづらい適応障害もある?
適応障害は「環境や役割の変化により症状が1ヶ月以内にあり、ストレス要因がなくなってから6カ月以内に症状が症状が改善する」状態とされています。
ストレスから離れれば改善するといっても、これからの人生の見通し、今まで自分がやってきた仕事の責任ややりがいなどもあり、ストレスから逃げること(仕事から離れること)が根本的な解決にならないこともあります。
特に昇進や転職・配置転換等、自分も適応していきたいと思った役割の変化による適応障害は、未来また同じような壁に当たる可能性が高いです。
そのため働く人の適応障害の治療は、ただ環境から離れるだけでなく何が起きたかを整理し、もう一度起きた際にはどのように対応するかの「再発予防策」をつくることが重要です。
働く人の適応障害の原因は?
働く人の適応障害の原因は、3つあります。
① 心・脳・身体の個人のバランス:性格・脳の特性・生活習慣の乱れなど
② 環境:解決できない家庭や仕事の課題・人間関係
③ 適応力:個人と環境の間の適応能力
最初は①②③のどこか一つの不調から始まりますが、最終的には①②③すべてが崩れることが多いです。 本人の性格やストレス耐性も原因のひとつです。同じ環境下でストレスと感じて不調になる人と、ストレスと感じても対処ができる人がいます。
自分の周りでストレスに対して対応できる人がいたのであれば、ストレス耐性のスキルを付けるために振り返りやビジネストレーニングを適応障害の治療に組み合わせたほうがよいタイプといえます。
適応障害になりやすい人セルフチェックリスト
- 頼まれると断れず受けてしまう
- 他人から言われたことを気にしやすい
- 自分の相談のために他人の時間を使わせるのは申し訳ない
- 0か100で物事をとらえてしまう
- 自分のストレス解消法がうまく見つけていない
はじめての適応障害治療
適応障害は「ストレス原因を取り除くこと」で改善をしますが、なかなか簡単に取り除くことができないからこそ「適応障害」になったともいえます。
たとえば、責任が重いがやりがいもある仕事、自分や家族の人生としての自分が誠実に対応していきたい人間関係等もその一つになるでしょう。
ストレス原因に対して、対応できる人とできない人がおり、ストレス耐性は人によっても心身の状態によっても異なります。
ベスリクリニックでは下記のように、まず心身が疲弊している場合には、一時的にストレス原因から離れたり、お薬の治療(薬物療法)や薬を使わない脳治療(TMS治療)、カウンセリング(精神療法)を組み合わせ心身を整えます。
適応障害に対する薬物療法や休職自体は、ゆっくり休む養生であり「疲弊した心身の回復」のための対処療法です。
適応障害の治療は対処療法でだけはなくビジネススキルとして再発予防のスキルをつけるカウンセリングや「ビジネストレーニング」を組み合わせることが重要です。の適応障害治療
適応障害は「ストレス原因を取り除くこと」で改善をしますが、なかなか簡単に取り除くことができないからこそ「適応障害」になったともいえます。
ベスリクリニックの適応障害 初診の流れ
ベスリクリニックでは、適応障害の方への診療を行っています。
初診では、治療方針のご相談だけでなく診断書や、お薬の治療、カウンセリングのご相談ならびに他に不調の原因がないか採血などを行っています。
他院にすでにおかかりの際や、休職中の方も当院へ転院ができるかのご相談も行っております。
初診をご希望の方は、まずはWeb予約よりご相談下さい
よくあるご質問
適応障害かわからないです、まだ頑張れる気もします。自分でできる対処法を教えてください。
もし業務が思うように進まずパフォーマンスが落ちている、うまく眠れない、いつのまにか違うことを考えている、などの症状で業務に支障が出はじめているのであればイエローカードが出ています。休日にストレス原因から物理的に離れて身体を動かしたり、別のコミュニティへいき、違う人間関係を持つこともよい息抜きになるでしょう。
休みの日に疲弊して朝起きづらくなる、ずっと考え込んで楽しく過ごすことができないという時には、相談のタイミングです。家族や親友など近しい人だからこそ相談が逆にしづらいという場合もあるでしょう。つらい状態を我慢するといつの間にか冷静に考えられなくなったり、判断できなくなったりすることもあります。できるだけ仕事に影響が出ないためにも、「こんな軽くても相談していいのかな…?」というタイミングでまず一度ご相談にいらしてみてください。
「こんな軽い状態で相談に行ってもいいのかな…?」というときが一番相談に適した時です。
人生で悩むときに、横で応援し、一緒に走っていくようにサポートしていきます。
適応障害になったら仕事はどうしたらいいですか?
適応障害の重症度にもよりますが、症状が強い場合には一時的に仕事を休むことや業務調整を進めることもあります。
会社が怖い、相談しにくい、などのお悩みがあれば、会社と相談がしやすくなるように診断書のご相談も行っております。
不調な時に仕事を辞めて「退職する」、「転職する」 という選択肢を取ることはおすすめしていません。終身雇用の働き方からジョブ型や転職が珍しくなくなった一方、不調が原因で休職、退職をした場合には「勤務継続」や「復職」よりも「転職」が難しいことも多いです。
病状の観点からも、特に転職は人間関係も仕事も環境も新しくなるため、「復職」よりもハードルが高いといえます。
適応障害で休職するか迷っています
休職のメリットやデメリットの整理や、休職をせず業務調整や有給の利用により立て直しができるかも含め、休職前の相談を行っております。
- 休職期間を定めた就業規則等の規定があるか
- 制度に基づく休職満了日と期間
- 休職期間中の連絡窓口担当者・連絡方法・連絡頻度
- 産業医の先生との面談有無
- 復職時の会社規定や復職プログラムの有無
- 休職中の給与や傷病手当等の手続き方法
- 仕事の引継ぎ
その後再度医療機関を受診し、休職できる期間以内で休職の診断書をもらいましょう。
休職のご相談の場合には、休職開始サポート外来をご確認ください
適応障害になったら転職しても治らないですか?
終身雇用の働き方からジョブ型や転職が珍しくなくなった一方、不調が原因で休職、退職をした場合には「勤務継続」や「復職」よりも「転職」が難しいことも多いです。
病状の観点からも、特に転職は人間関係も仕事も環境も新しくなるため、「復職」よりもハードルが高いといえます。
適応障害で休職・退職のメリット・デメリットを教えてください
一方、適応障害で休職する際には3つのデメリットがあるといえます。
①社内評価や転職での市場価値が下がる
昇進、転職の際には、実務経験年数や成果、ならびに健康管理ができるかの社会人としての健康管理スキルも鑑みて評価がされます。
休職により、業務管理能力や健康管理スキルの評価を低く見られがちになる可能性があります。
②収入が減る
休職の期間や制度は勤続年数や会社の規定により異なります。場合により休職ができないことや収入が減る場合あります。
労災保険や健康保険の傷病手当等の制度を用いてある程度の収入が見込める場合もあります。
③社会復帰しづらくなる
休職をする場合、周りに頼りづらい仕事を持っていることが多く自分で抱えがちになります。
休職後に復職できた人は51.9 %にとどまるとどまるというデータもあります。独立行政法人 労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス・私傷病などの治療と職業生活柳雄園支援に関する調査」:厚生労働省 こころの耳「統計情報・調査結果」
引継ぎの際にも「周りに迷惑をかけてしまった」と思ったり、「復帰したらどんなふうに周りからみられるのか」等のプレッシャーを感じて復職を考えると不安になったり、体調が悪くなったりする人もいます。
特に「転職」は人間関係も仕事も環境も新しくなり、転職できる保証もないので「復職」よりもハードルが高いといえます。
適応障害の休職診断書はもらえない?もらえる?
診断書は医学的な判断が必要です。現在の状況を伺い専門家として休職が適切と判断される場合に診断書を作成します。
ただし、初診日に診断名が定まらない場合には、初診日に休職の診断書は発行できない場合もあります。その場合には数回の通院を経た後診断書を発行したり、必要に応じより専門的な医療機関の受診を推奨いたします。
休職診断書は
①休職の期間、②病名、③症状などが記載されます。
おおよそ休職診断書2週間~1ヶ月毎に判断され記載をされることが多いです。
会社から記載事項についての指示がある場合もありますので、基本的には状況を伺いながら休職の診断書を作成いたします。
適応障害とうつ病の違い、診断基準とは?
2023年6月に出たDSM-5-TRの邦訳版では、「適応障害」から「適応反応症」に名前が変更されました。
アメリカでは精神科外来患者の5~20%を占めるといわれており「うつ病」と同じくらいよくある病気の一つです。
DSM-5-TRによると「適応障害(適応反応症):Adjustment Disorder」は
①「ストレス原因の始まりから3か月以内に症状が出現する」
②「ストレス原因に不釣り合いな強さの著しい苦痛」もしくは「社会的,職業的,重要な領域における支障」のいずれかもしくは両方
③「ストレス原因や結果が終了した後6ヶ月以内に症状が改善する」
が診断基準とされています。(※日本語でわかりやすいように意訳を含みます)
つまり、①ストレス原因が明確である ②ストレス反応に対する想定される反応を超えた心身の苦痛 ③ストレス原因と症状に時間的な関係が確認できたときに診断が可能です。
一般的に精神疾患はストレスを発端として発症をすることが少なくないため、「ほかの精神疾患の基準を満たしていない」という除外診断が必要です。
そのため、初診から「適応障害」と診断をすることが難しい場合も多くあります。
ICD-11(2022年1月に発行された邦訳版)でも「適応障害」から「適応反応症」と改められました。
DSM-5-TRとの違いは特徴的な周夫嬢として、ストレス原因やその結果に対してとらわれ(preoccupation)とストレス員の潜在的な意味に関する反芻(rumination)が取り上げられています。とらわれや反芻は「うつ病」でも認められること、「適応障害(適応反応症)」の中にはストレス原因に対して思考や物理的な距離を取ろうとする態度をとる人もいるため最終的な判断が難しいケースも多いです。
適応障害と診断をされても5年後に約40%以上がうつ病などの診断名に変更されるという報告もあり、適応障害はその後の重篤な病気の前段階の可能性もあります。
適応障害の薬物療法はどのような治療ですか?
適応障害の薬物療法は対処療法的に行われることが多いです。うつ病と異なり、適応障害に対する薬物療法のエビデンスが乏しいとされています。
飲んだら人間関係が改善するお薬がないように、適応障害自体を改善するお薬はありません。
落ち込みや疲弊が強く、ストレス原因から離れられないときに少しでも負担を減らすために、もしくは適応障害に対する適応スキルを付ける際に邪魔する症状を抑えるために薬物療法は用いられます。
不眠が強ければ、睡眠導入薬などの睡眠薬、焦りや不安、落ち込みが強ければ抗不安薬や抗うつ薬など、副作用の少ないお薬を少量から処方することが多いです。
精神科・心療内科の薬は怖い、依存してやめられなくなりそうと不安に思う人もいるかもしれませんが、症状改善とともに減量し減薬のサポートも行います。
適応障害の脳治療(TMS治療)はどのような治療ですか?
TMS治療(transcranial magnetic stimulation/経頭蓋磁気刺激法)は、うつや集中力低下に関わる前頭葉を「磁気刺激」により直接ケアします。
「心のお薬は依存しそうで怖い」・「副作用が少ない治療で仕事を継続したい」という悩みを持ったビジネスパーソンにピッタリの治療です。
磁気により身体を傷つけることなく脳の治療ができる副作用の少ない新しい治療です。
適応障害のカウンセリング(精神療法・認知行動療法)はどのような治療ですか?
ストレス原因から離れることが難しい時、また本質的な人生の解決になっていないとき求められるのは適応力の向上です。
ベスリクリニックは、「働く人のパフォーマンス低下」に対し病状やお悩みに合わせて、カウンセリング・トレーニングを実施しています。
心身の不調の原因は、仕事や家庭で起こる問題に対し、過去の経験をもって何とか適応しようとする際の「ひずみ」により生じるとベスリクリニックでは考えています。
適応障害に対して「治療の本質」であるカウンセリングを段階別に準備しています。