仕事を思い出すと辛い。これってトラウマ?
- 平日の朝、動悸や吐き気が強くなる
- 職場の特定の人のことを考えると辛くなる
- 特定の人を前にすると動悸がする
- 仕事の嫌な夢を繰り返し見る
- 休みの日も「連絡がくるのでは?」と怖い
- 仕事用のPCを開こうとしても開けない
当院にはこれらのトラウマ症状でお悩みで、「トラウマを克服したい」「トラウマを解消する方法が知りたい」といった方が多く受診されます。
このような症状があると「このまま良くならないのでは?」「仕事をやめるしかないのかな?」などと不安になるかもしれません。
しかしこれらの症状は、適切に治療をすればしっかり改善することがほとんどです。
この記事では、トラウマの代表的な症状、メカニズム、トラウマの治療法、治療ケース例についてお話しします。
この記事のポイント
- トラウマは「異常な状況に対する正常な反応」
- 治療が必要かどうかのポイントは「仕事や日常に支障が出ているかどうか」
- 「危険」なものが「安全」と感じられるようになると症状は改善する
- トラウマ治療によって、従来抱えていた生きづらさが解消する場合がある
トラウマ症状とは
いわゆる”トラウマ”とは、「何かの出来事によって肉体的もしくは精神的な衝撃を受けた後、長い間それにとらわれてしまう状態で、日常生活に否定的な影響が出ているもの」を指します。
- 似たような出来事を思い出すと嫌な気持ちになる
- 似たような出来事が起きた時に自律神経症状(動悸、吐き気、頭痛など)が起きる
- 何度も嫌なことを思い出してしまう(同じ夢を見る)
- きっかけに関連した出来事を避けようとする
- 落ち込みや意欲の低下、集中力の低下が起きる
- 寝つきが悪くなり、睡眠が浅くなる
- 些細なことでイライラや不安が起きやすくなる
特定の状況に置かれた時に出る反応もあれば、関係ない場面でも強く出る反応もあります。
トラウマのメカニズムは?
では、これらのトラウマ症状はどのようなメカニズムで起きるのでしょうか。
最も重要なポイントは、トラウマ症状は「異常な状況に対する正常な反応である」ということです。
例えば、あなたがサバンナにいて、目の前にお腹を空かせたライオンがいることを想像してみてください。ライオンはじっとこちらを見つめ、10メートル、7メートル、5メートルと近づいてきます。
あなたは不安になって、動悸がして、頭が真っ白になり、その場から逃げ出したくなるでしょう。もし逃げ切れたとしても、そのライオンがいた場所のことを考えると、恐怖で動悸がするでしょうし、明日もその近くに行くと考えると夜も眠れなくなるかもしれません。
これらの症状は、ライオンという危険から自分の命を守るために起きる当然の症状です。
動悸がすれば全身に血流を巡らせ早く逃げられます。足がすくむのは感情を麻痺させて身を守るためですし、逃げた後も不安に思うのは危険な場所にこれ以上近づかないようにするためです。
トラウマ反応でも、これと同じことが起きていると言えます。
実際に目の前にいるのはライオンではないですし、上司に叱られても命の危険があるわけではありません。しかし、「これは危険だ!」と脳が判断すれば、体は自動的に、目の前にライオンがいるのと同じ反応を示します。
脳がそのような反応をする目的は、「危険からあなたの身を守るため」です。
つまりトラウマ反応そのものは悪いことではなく「異常な状況に対して、無意識にあなたの身を守るために現れた正常な反応」だと言えます。
自分を守る力が正常に働いてくれているからこそ、起きた反応ということですね。
しかし、正常な反応であったとしても、過度に反応が起きてしまうと日常生活や仕事に支障が出てしまうこともあります。
そのような場合には、医療機関やカウンセリングで治療を行うことが有効なこともあります。
ビジネスパーソンに多いトラウマのきっかけは
では、トラウマのきっかけになるのはどのような状況でしょうか。
具体的なビジネスシーンとしては、
- ミスをしたことをオンライン会議で叱られた
- ChatworkやSlackなど社内連携ツールで、大勢の社員がいる前でミスを指摘された
- 休みの日でも時間を問わず電話がかかってきて叱責される
- 口調がきつい人から何度も指摘を受け、人格が否定されるように感じる
などがあります。共通するのは、「安全がおびやかされたように感じる」ということです。
どう感じるかは人によって違うので、同じ状況であっても、トラウマになる人とならない人がいます。
例えばミスを指摘された時でも、相手との間に十分な信頼関係があれば問題なく受け入れられます。しかし最近では、コロナ禍でプライベートなつながりが薄く安全を感じにくい、オンライン中心の仕事で相手のことがよくわからない、といった背景から以前よりも安全を感じにくくなっているようです。
また、人によっては幼少期の体験が関連して、特定の状況に対して過度に反応が現れることもあります。このような場合には時間をかけて丁寧にトラウマ治療を行うことで、生き方そのものを見直す機会となり、生きづらさが大幅に改善する例もあります。
トラウマ症状はどのように改善するか
では、トラウマはどのように改善していくのでしょうか。
「トラウマ症状は危険から身を守るために起きている」というメカニズムからもわかる通り、
「危険だ」と感じていた状況が「安全である」と認識できた時、それ以上自分を守る必要がなくなり、結果として症状は改善していきます。
トラウマ体験の後、時期ごとに起きやすい症状と対処法について説明します。
1.急性期(トラウマ体験の直後~およそ3週間)
危険を感じるイベントがあった直後。夜眠れなくなったり、何度も思い出したりする。思い出すと自律神経症状(動悸、吐き気)が起きることがある。ショックは一時的なものであることも多く、まずは信頼できる友人やカウンセラーに相談したり、気を紛らわせたりすることが有効な時期。
一般的なアプローチ
- 職場の人(上司・同僚・産業医)に相談する
- 家族や友人など信頼できる人に相談する
- 休みの日は没頭できる趣味などで気を紛らわせる
- あまりに症状が強ければその場から離れる(休みを取るなど)
当院における治療
こころ外来(カウンセリング)、BSP(ブレインスポッティング)など
まずは感情を吐き出すことが大事なので、家族や友人に話しにくい場合には、守秘義務のあるカウンセリングという手段もあります。
2.適応期(トラウマ体験のおよそ3週間以降)
危険を感じるイベントはひと段落したが、似たような状況になると身体症状(動悸、吐き気、など)が起きたり、思い出すと嫌な気持ちになったりする。生活習慣を整えた上で、安心できる人との相談を続けつつ、起きたことを無理のない範囲で振り返っていく時期。1ヶ月以上影響が残るようであれば、医療機関の受診を積極的に検討する。
一般的なアプローチ
- 生活習慣(睡眠、食事、運動)を整える
- 引き続き家族や友人、上司など信頼できる人に相談する
- 状態が改善しなければカウンセリングなどを検討する
- 場合によっては転職や部署移動を検討する
当院における治療
SE(ソマティックエクスピリエンシング)、EFT、TMS治療、漢方薬など
トラウマ記憶を中長期的に処理していく。背景として幼少期の記憶なども関連している場合がある。TMS治療では抑うつや意欲低下、思考力低下をターゲットに行う。
医療機関やカウンセリングを受診するタイミングは?
医療機関やカウンセリングを受診するタイミングで悩む方も多くいらっしゃいます。ポイントは、
①日常生活や仕事に支障があるか
②状態が改善する見込みがあるか
の2点です。生活に支障が出ている場合や、改善の見込みがない場合には、専門機関への相談をご検討ください。
また、医療機関やカウンセリングの選び方については、治療者との相性が重要です。
受診することはハードルが高く感じるかもしれませんが、相性が合わないと感じたら他の場所を試せばいいのです。まずは試してみて、安心して治療を進められるかどうかを確認することがオススメです。
当院で行っている治療の紹介
例として、当院でトラウマに対して行っている治療を紹介します。
当院には様々な専門を持った60人以上のカウンセラーと10人以上の医師(2022年12月時点)が在籍しています。
「まずはぐっすり眠れるようになりたい」
「パニックになりかけた時の対処法が知りたい」
「根本的に、苦手な人を前にしても大丈夫になりたい」
といったクライアントのお悩みに合わせて、カウンセリングや処方などの治療プロセスをオーダーメイドで提案します。
当院で行っている、トラウマに特化したカウンセリングの例は以下の通りです。
トラウマカウンセリング
どのカウンセリングにも共通するアプローチとして、まずはカウンセラーと「安全」を感じられる信頼関係を作った上で、少しずつトラウマ記憶を処理していきます。
内服薬(漢方薬、西洋薬)
西洋薬には即効性の高いものが多くあります。全く眠れない日が続いているような場合には睡眠薬、不安がとても強い場合には抗不安薬などを処方することも可能です。治療の中心はカウンセリングですが、一時的に症状を緩和させ、良循環を作るきっかけとしては有効な場合があります。
TMS治療(経頭蓋時期刺激治療)
初めて来院された方には、医師による診察であなたにあった治療プロセスを提案します。
「今自分がどんな状態か知りたい」
「休職が必要か判断したい」
「どの治療があっているか相談したい」
など、まずはお気軽にご相談ください。
当院におけるトラウマ治療の症例
最後に、当院におけるビジネスパーソンに対するトラウマ治療の例を紹介します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。最後にポイントをもう一度まとめます。
- トラウマは「異常な状況に対する正常な反応」
- 治療が必要かどうかのポイントは「仕事や日常に支障が出ているかどうか」
- 「危険」なものが「安全」と感じられるようになると症状は改善する
- トラウマ治療によって、従来抱えていた生きづらさが解消する場合がある
休職中にトラウマ治療を行うことで復職して元気に働けるようになった方、トラウマが解消されることで幼少期からの生きづらさの原因がわかり自信を持って働けるようになった方など、さまざまな方がいらっしゃいます。
トラウマ症状は一見すると嫌なものですが、適切に扱えば自分の理想とする生き方に近づくきっかけにもなります。
東京でトラウマ治療をお探しの方は、まずは気軽に問い合わせください