新型コロナウイルス流行からの緊急事態宣言、それに伴いテレワーク・リモートワークが世界的に浸透しつつあります。
今回は前回に引き続き、緊急事態対応が終息し、テレワークで仕事をしていた人たちがまた通勤するようになると何が起きるか、それにどのように備えたらいいかについてお話しします。
通勤しなくなって活動量の減ったビジネスパーソン
前回は職場への通勤がなくなったことで目を動かさなくなり、その結果脳の働きも鈍くなるということをお伝えしました。
皆さんの中には目だけでなく、通勤しなくなったことで以前ほど歩かなくなった、身体を動かさなくなったというかたも多いのではないでしょうか。
身体を動かさなくなると運動不足になって太る、ということは皆さん想像に難くないでしょうが、実はこの運動不足も、コロナボケやメンタル不調に関連していることが分かっています。
運動は脳内ホルモンのバランスを整える
私たちの脳内には100種類以上の脳内ホルモンが存在しており、それらの働きによってメンタルの調子も上下しています。
そのうち、気分の落ち込みを防いだり不安になりにくくしたりする働きを担っているのがセロトニンと呼ばれるホルモンです。
セロトニンそのものは外部から摂ることが難しく、主に体内で産生されますが、体内のセロトニンはリズミカルな運動や活動によって増加することが最近の研究で知られるようになってきています。
リズミカルな運動と聞くとダンスやフィットネスを思い浮かべるかたも多いかもしれませんが、そういった運動だけでなく、規則正しい深呼吸や歩行、会話などによっても体内のセロトニンは増加します。
このリズミカルな歩行を定期的に行うことを助けてくれていたのが、通勤なのです。
パフォーマンス低下を引き起こすセロトニン不足
体内のセロトニンが不足しますと、脳はリズミカルで反復的な行動を無理矢理とらせようと身体に指示します。
よく見られるものは、貧乏ゆすり、ボールペンをカチカチする動作、机を指でコツコツ叩く仕草などです。
これらの行動を付け焼き刃でしても充分なセロトニンは産生されませんので、自分のセロトニン不足を周囲の人たちに伝播させるだけの結果に終わってしまいます。
また、セロトニン不足は会話にも表れます。
一対一の会話では形式的で無難だけれど中身のないやりとりが増えますし、ミーティングや打ち合わせでは定例報告やオチの分かりきっている冗談などで時間を費やすことになります。
どれも、脳内のセロトニンを補わんとして身体がとる典型的な代償行為です。
今からでもできるセロトニン不足防止法
外出自粛が解除されますと、職場でも街中でもこのような行動が多く見られるようになります。
こういった行動は本人のパフォーマンスを落とすだけでなく周りの人たちの生産性も低下させますので、一人ひとりの心がけによって未然に防ぐことが大切です。
そこで、外出自粛が解除される前から、セロトニンを産生する行動を意識的に行いましょう。
毎日10分でも人混みを避けて散歩しますと、体内ではセロトニンが産生され、落ち込みや不安を防ぎやすくなります。
また、食事のときによく噛んで食べるのもリズミカルな運動ですので、噛む回数ではなくテンポを意識して食事をするのもいいでしょう。
もちろん、家の中でできるエクササイズやリズミカルにバーベルを上げ下げできる筋トレなども、セロトニン不足を解消できますので、無理のない範囲で行うとメンタル不調の予防にもなります。
外出制限前の生活を思い出し、リズミカルな行動を意識しておうち時間を過ごしてみてください。
公認心理士 関本文博