投薬を前提としない心療内科・メンタルクリニック|メンタルケアならベスリクリニック

  • 初診の方専用

    再診の方専用

    初診お問合わせフォーム

  • 神田駅徒歩1分

    診療時間・アクセス

  • 薬に代わる急性期のうつ治療「磁気治療(TMS)」のご案内

うつ
うつ病 適応障害

2020.10.21

うつ

ケースレポート:うつ病に対するTMSとマインドフルネスの併用療法による治療効果


概要


5種類の抗うつ薬治療でも症状の改善が見られなかった30年来のうつ病患者さんに、TMSとマインドフルネスの併用療法を用いたところ、重症の抑うつ症状が軽快した症例報告をご紹介します。この併用療法では、30回のTMS治療、TMS治療中の自主的なマインドフルネス、20回のマインドフルネス認知療法(MBCT)の治療がなされました。

マインドフルネスとは


判断することなく現在の瞬間に意識を向けることで、ストレスを減らし、心の平静を得やすくなります。ここ10年で、ヨガ、瞑想、MBCTといったマインドフルネスに関する治療法についての研究が進み、抑うつや不安の症状を改善するために広く使われるようになりました。

マインドフルネスの効果を評価した39の研究のメタアナリシスによると、不安障害などの不安症状の減少、並びにうつ病などの抑うつ症状の減少に効果的でした。

マインドフルネス認知療法(MBCT)とは


MBCTはマインドフルネス瞑想トレーニングと認知行動療法(CBT)を融合したもので、特に慢性うつ病患者さんのための再発予防治療として開発されました。認知行動療法と同様に、MBCTは、うつ病の患者さんは考え方のクセによって抑うつ状態を繰り返すという理論に基づいています。MBCTは、この考え方のクセを中止させ、入ってくる刺激に対する反応を抑え、判断することなく刺激を受け入れて観察することに集中する練習です。マインドフルネスによって、考え方のクセが生じていることに気づき、より反応しない方法に変えやすくなります。

ある研究では、認知行動療法や抗うつ薬治療で良くならなかった抑うつ症状がMBCTで改善したと報告されました。2011年発表のメタアナリシスでは、うつ病に対するMBCTによって、抑うつ症状再発のリスクが顕著に減少することが分かりました。

併用療法の内容

 
TMSは計30回(週5回 6週間連続での治療)、MBCTは計20回(最初の週に5回、その後1日おきに1回のペースで5週間)行われました。

TMS治療前の5分間と、治療開始後の30分間にマインドフルネスを行い、その後治療が終わるまでMBCT治療が行われました。MBCTでは、リラックスしてネガティブな思考に反応しない指導が行われました。否定的にならない他の考え方を取り入れることで、思考のクセと認知の歪みを減らし、ネガティブな反すう思考を減らす練習が行われました。

TMSとマインドフルネスを組み合わせる利点

 
TMSのセッション中にマインドフルネスを行うことで、MBCTとの相乗効果により短期間で抑うつ症状を改善することが出来ると考えられます。TMS治療は、TMS治療セッション中のマインドフルネスと共に前頭前野を刺激するため、注意力や認知機能を改善し、否定的な反すう思考を減らすことができます。機能不全の思考パターンや否定的な思考のクセを修正し、気分を改善し対処能力を向上するのに役立ちます。この研究の著者によると、患者が独力でマインドフルネスなどを行えるようになれば、これらを日常的に実践することで治療効果を高め、うつ病の寛解が可能になるだけでなく、寛解の期間を延長することが出来るということです。

治療までの経緯

 
患者さんは30代前半から30年来のうつ病に悩まされている68歳の女性です。5種類の抗うつ薬が十分量処方されていましたが症状改善乏しく、全般性不安障害を伴う大うつ病性障害と診断されていました。主なお悩みは気持ちの落ち込み、頭のもやもや、虚無感でした。その他、持続的な興味の喪失、忘れっぽさ、否定的な反すう思考など、複数の抑うつ症状が持続していました。治療に難渋しており、今回このTMSとマインドフルネスの組み合わせ治療を選択しました。

治療の効果

 
図1は、この患者さんのTMSとマインドフルネスの併用療法による治療効果を示しています。一番左の棒グラフは治療前の抑うつ症状の程度を示しており、評価尺度HAM-D17 32点と重度なうつ状態でした。棒グラフは右に行くにつれてTMSセッションを重ねた際の症状の経過を示しています。右肩下がりに症状が改善したことが分かります。特に13回のセッション終了時に15点と顕著な改善を示し、その後30回目のセッション終了時には6点と抑うつ症状の寛解を示しました。


図1.難治性うつ病患者に対するTMSとマインドフルネスの併用療法による治療効果

HAM-D17とは:ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale, HDRS)の略で、うつ病の状態を客観的に数値化するための評価尺度です。17の質問について、専門家が患者さんから回答を聴取することにより評価します。点数が高いほどうつ病の症状が重く、8点から13点を軽症、14点から18点を中等症、19点から22点を重症、23点以上を極重症と解釈します。

まとめ


30年間様々な抗うつ薬治療を続けてきた方が、TMSとマインドフルネスの併用療法でうつ病を改善させた1例をご紹介しました。TMSもマインドフルネスも、どちらも単独で抑うつ症状の改善効果が確認されている治療法ですが、同時に行うことでの相乗効果も示唆されています。TMS治療とマインドフルネスを併用することで、否定的な反すう思考の修正、抑うつ気分の改善、注意力や認知機能の改善効果が期待されています。

当院では第4土曜日にマインドフルネス集団療法を行っています。
TMS治療をより効果的に受けるために、マインドフルネスをしてみてはいかがでしょうか。

医師 産業医 永野泰寛