【休職前】
<復職が得意な医療機関の休職開始ポイント>
- □現在の状態がなぜおこったか説明をしてくれる
- □現在の状態からどのような治療の方針で復職にむかうか道筋を設定してくれる
- □最終復職期限を確認する
- □復職時の会社の復職規定・復職プログラムがあるか確認する
- □復職の診断書を書く時の医療機関としての復職基準を伝える
- □生活記録表で生活管理を行い、必要に応じてアドバイスをもらえる
<休職者が発生した時の人事・総務のやること>
▼産業医と会社としての復職条件設定
(※復職の診断書の提出だけではなく、会社の規定を伝える)
▼休職者と医療機関へ以下の情報を共有する
□休職期間の上限
□会社の復職制度
・復職プログラムの有無・試し出社・ならし出社制度・復職時の出勤時間
・産業医面談・主治医診断書の提出・主治医意見書の提出
□休職中の職場の連絡先・報告方法(電話・メール・面談・文書郵送)・経過報告頻度
□復職をするまでのフロー(聞き取り・診断書・産業医との面談)
□傷病手当の申請方法等(傷病手当金の保証上限)▼復職時の治療目標:就労可能レベルの回復を目指す
日常生活レベルの回復
・仕事のない日常生活を規則正しく、支障なく送り、趣味や娯楽など本来楽しめていたことを楽しめる
就労可能レベルの回復
・定められている就業条件に従って仕事をすることができる<別枠>
▼※復職の基準として会社規定を共有する必要があるのはなぜ?
(人事総務向け)
・復職圧力がかけられるのは、会社
・医療機関では治療したい人しか対応できない
▼復職基準は医療機関にはない?
社会で働いたことがない医師がほとんどです。産業医の視点がなく、よくなったといって本人の希望で復職診断を出してしまうことがあり、主治医の診断書の復職できるというのが、【日常生活レベルの回復】なのか、【就労可能レベルの回復】なのかを判断し、就業が安定してできる状態ではない場合は、療養目標を再度伝える必要があります。
▼「休む」ことで解決すること、しないこと
「休む」ということがすべてを解決するような対応として使われることがあります。しかしながらこの「休む」ことにもデメリットがあります。休職は期間依存性に復職が難しくなります。療養期間がながければ長いほど仕事をしない生活に心身共に慣れ、復帰するハードルが高くなることです。
▼休職開始時に、復職時の配置転換を前提にした休職をしない
休職は、雇用された人が契約をした際の仕事を働ける状態になり、復職して仕事を継続するためのものです。復職時の配置転換を前提にして休職を開始すると、再発予防策が個人の内部ではなく、外部に依存し、休職の原因が外的要因のせいになってしまい、誰かのせいで休職になったという状態と考え自分で自分の状態を改善しようという気持ちがそがれてしまうことがあります。
休職中につくるべき、再発予防策をつくる気にならず、だらだらとした復職になりがちになります。たとえ配置転換を前提にした復職であっても、配置転換後にまた同じようなことが起きてしまう可能性もあります。休職開始時には配置転換を前提とした復職は行わず、経過をみて復職ができるような状態になった際に配置転換をして復職するかを決めたほうがよいです。【療養期】
療養期とは、ストレスが原因になって心身が正常な働きをできなくなってしまった状態をいいます。まずはストレスがかからない環境に身を置き、心身を落ち着ける必要があります。このとき、寝たまま回復するのはおおよそ3日程度です。
日本人は「ゆっくり休む」=「寝る」という対応をとることが多いです。
休職前の休日は「寝たきり」になっていなかったでしょうか?それでも改善しない、むしろ疲れがどんどんたまっていく状態であったのであればその「寝て休む」はあなたの体調の改善にはつながりません。
そのまま寝たきりを続けてしまうと、体力、気力が低下して、リズムが崩れお寝坊、夜更かし型に生活が変わってしまいます。生活時間が変わると、復職までにその期間の2倍時間がかかるようになります。はやく復職したい場合は、この休職の「寝たきり」を予防し、日中に起きていられる状態になるようお薬の調整やTMS治療でうつ状態に対する治療を行い、同時に休職中の生活リズムを「正しい心身の休め方」で整えることが大事です。療養期チェックリスト
□寝付くのに時間がかかる
□夜中に目が覚めてしまい、再び寝付くことができない
□睡眠をとることに支障があり夜がつらい
□朝目が覚めても布団から出られない
□食欲がない、食べ過ぎてしまう
□以前は楽しめていたような趣味も全く手につかない療養期の望ましいこと
□うつ状態の治療をしっかりと行う 薬に関して心配なことは主治医に相談する
□睡眠を大事にする
□家事が負担に感じるようであれば、家族にお願いしたり、実家に帰省するなどして日常生活の負担を軽くする~治療方法~
薬物療法
抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などが用いられます
抗うつ薬は効果が現れるまでに2~4週間程度かかります。飲み初めに効果を感じられず、吐き気やめまいなどの体の症状の副作用があって、むしろ調子が悪くなったと感じる人も少なくありません。だからといって自己判断で服薬を中止することはおすすめしません。もしも副作用がひどくて日常生活に支障がでたり、心配になったら主治医に相談しましょう。~離脱症状~
抗うつ薬は急にやめてしまうと離脱症状と呼ばれる、めまいやしびれ感、頭痛などの症状が出ることがあります。当院では、減薬を念頭に置き、必要な時にお薬を処方します。減薬は体調が良い時におこないます。復職に向けて心身の状態が安定している状態が続いていれば、復職に向けてお薬を減らしたり、復職後の安定を確認して再発しないように減薬をだんだんと行います。
体調が悪い時こそお薬の影響や副作用、このまま飲み続けていいのかと不安になるかもしれませんが、特に抗不安薬、睡眠薬の体調が悪い時の減薬はさらに体調を悪化させ、お薬が増えてしまう原因にもなります。
主治医と相談しながら減薬の時を見定めましょう。TMS治療
お薬に頼らない磁気による脳の治療です
お薬よりも効果が早く強く得られ、副作用が少ないことがポイントです。
通院頻度が最初は高いため、休職中の生活リズムづくりにもおすすめです。
こころカウンセリング
休職の直前・直後でいっぱいいっぱいな頭の中を整理するベーシックなカウンセリングです
復職・転職外来
休職についての不安や、復職までの治療目標の設定、必要な治療を相談できるカウンセリングです。【療養期から行動活性化期へ】
それであればどのように「ゆっくり休む」のか?体を休めるには、正しい「心身の休め方」をもう一度一度習慣化することが重要です。休職中に心身の休め方を実践できるように、休職開始後5~7日目で睡眠トレーニング・セロトニントレーニングを行うことがおすすめです。
この正しい心身の休め方が、就労に必要な体力や集中力を回復するためのトレーニングとなります。【行動活性化期】
「正しい心身の休め方」を実践し、睡眠や食欲には問題なく、楽しく過ごせる時間がでてきたら、復職に向けた取り組みを行う準備ができたといえます。
以下のような状態が行動活性化期の特徴です
□死んでしまいたい気持ちはない
□寝付きが30分程度になった
□夜中に目が覚めてもそのまま寝付くことができる
□毎日ほぼ一定の睡眠リズムを維持できる
□おいしくご飯が食べられる
□日中は家事をしたり、外出したりすることができる
□本を読んだり、趣味を楽しむことができるようになる療養期を終えた段階の日常生活レベルの回復程度の段階で復職してしまうと再発リスクは著しく高くなります。
生活できるような状態の健康と、仕事ができるような状態の健康は必要とされる負荷が大きく異なります。「ただ起きる、寝る、気ままな生活で体力も落ちている状態」から「早起きして決まった時間に通勤し、決まった時間に精神活動や身体活動を行い仕事をする状態」になるので、負荷がかなり異なります。休職は期間依存性に復職が難しくなります。療養期間がながければ長いほど仕事をしない生活に心身共に慣れ、復帰するハードルが高くなることです。~行動活性化期の治療~
TMS治療
体調が安定し、必要以上のお薬を減薬しやすくなります。
頭にモヤがかかったような感じ、本を読む、勉強するなどの思考力・集中力をサポートする状態に用いられます。復職・転職外来
休職直後に復職目標や復職の流れを確認できなかった場合、この時に復職・転職外来を行い再度目標を立て直し社会復帰までのながれを確認することができます。行動活性化外来
「今日は気分がいまいちだから何もしない」、「今日は気分が良いからなにかしてみよう」といったように気分に合わせて行動する気分本位の行動パターンは行動活性化期には回復を邪魔してしまいます。
「すっきりしない、だるい、おちこむ」ので、「ベッドでゴロゴロ、ソファーでだらだら」して活動がよくせいされると、充実感や達成感がなく、さらに気分がおちこむ、気分が落ち込むと行動が抑制されることがあります。
この、わかっていてもできない状態をできる状態にするのが行動活性化療法です。感情開放外来
だんだんと思考ができるようになってきて、休職の原因や不調の原因となった過去のことが思い出されて不安になる。そんな時には、過去の記憶と感情を切り離す感情開放外来がおすすめです。
通勤前に吐き気がする、電車に乗るとおなかが痛い、会社で緊張して呼吸が浅くなるなどの症状がでていた場合にはこの時期に感情開放外来をおこなうことをおすすめします。ビジネストレーニング~Basic~
不調になった原因が、入職、転職、昇進であり、上司・部下関係や仕事の質や量の問題であれば、成果の出し方、ビジネス上の人間関係の作り方をトレーニングするビジネストレーニングがおすすめです。<社会復帰期>復職2か月前考え方が極端になり、その結果落ち込みを深めてしまったり、イライラしたり、心地よくない感情に悩まされている場合、見直すべき認知の癖があるかもしれません。そのような認知の癖をリワークでは集団で見つめなおします通勤訓練・模擬訓練・仕事にお対する作業や勉強
通勤訓練
通勤の時間に合わせて起床就床リズムをつくります。おおよそ復職前1か月、この起床就床リズムが安定すれば仕事習慣として
復職可能と判断します。
模擬出勤
一定時間物事に集中し、作業を行えることは、仕事に向かうために大切なポイントです。
あらかじめ1日単位あるいは1週間単位でスケジュールと課題を決め、その予定に基づいて活動で切るようにしましょう。
なんとなく活動するのではなく、計画に基づいて毎日を過ごせることが大切です。復職準備として、仕事に関する道具、制服、資料等を積極的に目にしたり、手に取るようにします。気分がわるくなったり、著しく動揺するようであれば、復職の時期や、復職のために必要な治療を再考する必要があります。不適応を生み出しやすい認知の癖
□白黒/0-100/全か無か思考
物事を極端に右か左で考えてしまう。あいまいさが許せない。妥協ができない完璧主義の真面目な人がなりやすい
例:少しでも不十分なことがあるとすべて失敗のように思う
□過度な一般化
わずかな事実を根拠に、あらゆる出来事が同じ結果になると一般化しすぎる
例:ある人に頼み事を断られてしまい、誰も自分の頼みごとを聞いてくれないんだと考えてしまう
□自己関連付け
悪いことがおきると、自分に関係がないにもかかわらず自分のせいだと考えてしまう
例:上司がイライラしていると、自分がなんにか悪いことをしてしまったかもしれないと考える
□過大評価・過小評価
短所や失敗を大きくとらえてしまい、長所や成功を小さくとらえてしまう
例:仕事で困っていることを、人に言うべきではないと考える
□べき思考
自分や他人に対し「~ねばならない」、「~すべきだ」と決めつける
例:メールは5分以内に返さなければならない
□ラベル貼り
ものごとや人に「どうせ~」「~である」とラベルを張り、一度貼ったらそのラベルのイメージから離れられない
例:どうせ相談しても無駄だというラベルを張り、助けを求められなくなる
□勝手な読心術
相手が言った分けれでも、したわけでもないのに、相手の気持ちを勝手に推測してわかっていると思い込む
例:みんな自分のことを足手まといと思っていると違いないと考える
□破局視
確かな理由もないのに、悲観的な思い付きを信じ込んでエスカレートしていく
例:部署異動で初めての仕事に戸惑っただけで、この先ずっと仕事が覚えられず、評価がさがってしまうと考える~社会復帰期の治療~復職1か月前
ビジネストレーニング~Advance~
不調になった原因が、入職、転職、昇進であり、上司・部下関係や仕事の質や量の問題であれば、成果の出し方、ビジネス上の人間関係の作り方をトレーニングするビジネストレーニングがおすすめです。プレリワーク:まだ生活リズムが完璧に整っているわけではないため、生活リズムを整える通勤訓練、より少数でリワークに入るために人とディスカッションするなどの準備をしたい。会社にかかわることをみると調子をくずしてしまうような状態の場合はプレリワークで復職の準備を行う。リワーク:生活リズムが整っており、復職に対し前向きに考えられるような状態である。
再発せずに働き続けられるように、集団で自分の認知の癖をみなおしたり、ディスカッションにより他の人の体験やほかの人がどのように復職へむかっていくかを共有しながら再発しにくい組織人として復職できるように準備をする
復職の検討すこし気分がよくなったから復職したいとなり、復職の診断書がでるのではなく、復職時には、就業ができる状態と判断される最低限以下の復職基準が達成される必要があります□生活習慣が整っているか? 起床就床リズムが整っているか 食欲はあるか
□仕事習慣が整っているか? 通勤の体力、残業できる体力があるか
□就労習慣が整っているか? なぜ倒れたか、再発予防策があり、身についているか▼症状消退:病気の症状がないか、倦怠感がないか、集中力が回復しているか
▼生活リズム:起床・日中の活動・就寝の生活リズムが勤務に耐えられるものになっているか
▼日地上生活:元気な時の休日と同じような日常生活が送れている。楽しく過ごせているか。
▼就労意欲:仕事に対する自然な意欲があるか。焦りはないか。
▼セルフケア:自分の体調管理のポイントを理解しているか。ストレスマネジメントができるか。
▼症状安定:上記を満たした状態が少なくとも1か月はつづいているかスローペース&スモールステップを心がけましょう
職場に戻ると、休職の分を取り返すように頑張らないといけないと思ったり、周りの評価が気になったりして、ついつい無理をしすぎてしまうものです。1か月の成果や評価ではなく、1-2年後に成果を出し、周りから認められるような働き方をしましょう。帰宅後と休日の過ごし方が重要です
ついつい仕事のことを考えてしまいがちですが、家で考えても変わらないことを考えて気分が落ち込むのはもったいない時間の使い方です。体が職場を退勤しているのに、頭と心が残業しているようでは心身が休まりません。
休日は疲れて寝たきりになるのではなく、「正しい心身の休め方」でリフレッシュするようにしましょう。自分のイエロー信号をみのがさないようにしましょう
復職後の再発は一番注意したいです。特に復職後3か月、半年は生活の仕方や仕事の仕方に配慮する必要があります。
心身に負担がかかり、体の反応、心の反応、行動、認知の反応でストレス反応が出た時には、心身が発するイエロー信号です。
過去に変化が出たところは、不調になったときに反応が出やすい部分です。そのような時には、主治医に相談をしましょう。
異変を感じた時にすぐに相談しやすいよう、復職後定期的に通院をおこないましょう。通院と服薬に関する注意
少なくとも安定して復職ができるようになって3か月は通院を継続しましょう。おおよそ、復職後1週間以内、3週間、3か月が再発しやすい鬼門になります。
また、できるだけ早く減薬したいと、相談をせずに減薬するのはやめましょう。心のお薬は急にやめてしまうと離脱症状と呼ばれる、めまいやしびれ感、頭痛などの症状が出ることがあります。
減薬は体調が良い時におこないます。復職をして心身の状態が安定している状態が続いていれば、お薬をだんだんと減らしたり、復職後の安定を確認して再発しないように減薬を行います。特に抗不安薬、睡眠薬の体調が悪い時の減薬はさらに体調を悪化させ、お薬が増えてしまう原因にもなります。
主治医と相談しながら減薬の時を見定めましょう。
「うつ状態」の診断書を読み間違えないことうつ状態は、「落ち込んでいます」という状態を示します。
心療内科・精神科では、診断をするのにある程度の期間の診療が必要です。
1回や数回の診察では診断病名まではつけられず、まずは状態について診断書に記載をすることが行われます。うつ状態には様々な背景の病気や障害、例えば「適応障害」、「発達障害」、「パーソナリティ障害」、「統合失調症」なども含まれており、原因に対して各々対応が異なります。診断書に書かれていることが、すべてではないケースもあります。1. 今後に配慮した病名にすることがある:自律神経失調症など
2. 状態像:うつ状態など
3. 短期間では診断が確定しない
4. 診断の幅をもたせるために、広い病名を記載する▼産業医と主治医の違い
主治医とは、患者さんが主体的に選べ、「医師法・医療法」のもとに、「診断と治療」を中心に行い患者さんの味方になる役割を果たす
産業医とは、社員は産業医を選べず、会社が選ぶ。「労働安全衛生法」、「就業規則」を中心に、社員が健康に働ける状態か、環境かを社員と会社の中立になり医学的に判断する
主治医と産業医は立場が異なるため、視点も違います。両者間で意見をすりあわせるために、意見書をかわすこともあります。