はじめてのあがり症・不安症治療とは?
不安や恐怖の症状で日常生活や仕事に影響が出るのがあがり症・不安症です。
不安や恐怖は人間の危険に対する必要な感情ですが、不安や恐怖が強すぎたり、避けたりすることで日常生活に制限がかかってしまう場合、医療のサポートがあなたの悩みを和らげる可能性があります。
あがり症・不安症の症状セルフチェックリスト
「声が震える」、「動悸がする」、「頭が真っ白になる」というお悩みを持つビジネスパーソンは少なくありません。
不安の症状チェック
- 心臓がどき
- どきする
- 足や声が震える
- 頭が真っ白になる
- 手に汗をかく
- 顔が赤くなる
これらの反応は心や脳だけが理由ではなく、医学的には自律神経の症状といえます。
上記のような身体症状にあがり症や不安症でお悩みの方は、心と身体の両方をカバーするアプローチが必要です。
自律神経とは?
自律神経は交感神経と副交感神経に分かれます。
緊張すると、交感神経が優位になる人もいれば副交感神経優位になる人もいます。
交感神経が優位になると「動悸がする」、「手に汗をかく」という症状などがでます。
逆に副交感神経優位になると、「頭が真っ白になる」など気が遠のくような症状が出ます。
自律神経は何かをしようとするときに活動する神経です。
誰でも人前に立つと緊張しますが、あがり症、不安障害の人はこの自律神経の反応が鋭敏になりすぎている状態ともいえます。
あがり症は心と身体のクセ?
あがり症は心と身体の反応の癖です。あがりやすい、緊張しやすい人は普段から心も体も緊張しがちです。
「大丈夫」と思いこもうとしても、「大丈夫ではない」、わかっていてもなかなか身体の反応は出てしまう。
そんなときには心と身体の両軸からのアプローチが重要です。自律神経のバランスを自分で整えられる治療とトレーニングがおすすめです。
あがり症では脳と身体で何が起こっているの?
ある出来事に対して嫌悪や不安の感情が扁桃体で生まれます。感情が強くなればなるほど自律神経の振れ幅が強くなり身体症状が出やすくなります。脳には記憶のボックスがあり、このボックスの情報をもとにして「快・不快」の感情が生まれ物事を判断し解釈します。記憶→感情→神経伝達→筋肉収縮・臓器制御→身体症状という流れにより「あがり症」や「不安症」の症状が出るのです。
ジェットコースターに乗るときに、ワクワクして大好きという人もいれば、ドキドキして嫌だという人もいます。同じ物事に対して「快・不快」、身体の症状により好き、嫌いの判別が出るのです。
大事なことは「快・不快」の感情により心地よいワクワクか、不快なドキドキの身体症状が出て、身体症状の後に物事の認知や判断が入るということです。
「わかっているけれど身体が反応してしまう」場合には、感情の後の認知に特化した認知行動療法ではなく、扁桃体や身体症状へのアプローチを行う不安カウンセリングのほうが効果的な場合があります。
ベスリクリニックの初めてのあがり症・不安症治療
当院ではお薬の治療だけでなく、カウンセリングや心身を組み合わせたあがり症・不安症の治療を行っています。
あがり症・不安症に対ししっかりと向き合いたい、カウンセリングを受けたことがないけれど興味があるという方もまずはお気軽にご相談ください。
あがり症・不安感情開放外来
カウンセリングで不安になる心と身体のアプローチを行います。
あがってしまったときの対処法や、あがってしまうメカニズムからカウンセリングをすすめます。
初診やカウンセリングの状況によりまず身体アプローチが優先されると判断された場合には身体のアプローチもご案内させていただきます。
社交不安症に推奨のカウンセリング(精神療法)はなんですか?
日本不安症学会や英国のNICEガイドラインによる比較検討により社交不安症に推奨される精神療法(カウンセリング)が示されています。カウンセリングの個人セッションと集団セッションの場合には、個人セッションのほうが臨床的・医療経済的効果が優れるとされており、当院では基本的に個人セッションをベースとした不安症に対するカウンセリングを行っています。
漢方治療
自然治癒力を高め、体を整えます。
漢方は自然治癒力を高め体のバランスを整える、中庸を目指すことを基本にしています。
半夏厚朴湯:気が鬱滞して「のどや胸のつまり」に悩む方にお勧めです。気をめぐらして「のどや胸のつまり」を改善します。
酸棗仁湯:心身が疲労して「寝つき」に悩む方におすすめです。神経を鎮めて寝つきを良くします。
加味帰脾湯:心も身体も疲れ切って「寝ても熟眠感がない」、「途中で起きてしまう」という方におすすめです。
鍼灸治療
身体の反応が強すぎて心身が疲弊している場合には、まずは身体からのアプローチが効果的な場合があります。精神的緊張が強すぎる場合には、背部の筋緊張が強いことが多いです。肩甲間部~方~頸部のこりと背部の脊柱起立筋や相貌金、広背筋などが全体に強く緊張して板状になっている時には体の筋緊張を鍼灸治療で緩和するアプローチをとると早く改善することもあります。
バッチフラワー・NLP
心と体を香りで癒します。アロマテラピーで用いられるエッセンシャルオイルは芳香性の他界植物の樹脂や花、葉から方向分しの身を抽出した揮発性の高いオイルです。肉体面への作用の他、気持ちをリラックスさせたり、仕事の能率を上げたり、気分を積極的にさせる心理作用もあります。
あがり症・不安症の薬物療法
英国のNICEガイドラインでは、薬物療法の「前」に認知行動療法(カウンセリング)を行うことが推奨されてる一方、不安症の治療として日本では薬物療法が主に行われることが多いです。
ただ、忙しい中でカウンセリングが受けづらい、という方やカウンセリング自体苦手という方もおります。そのような方たちには抗うつ薬や抗不安薬を用いたあがり症・不安症の薬物療法も当院では行っています。
抗うつ薬による不安症の薬物療法
不安症の薬物療法として、第一選択は抗うつ薬になっています。不安症の一部の症状に使用するのではなく、不安症の中心となる不安症状の改善に対して使われます。不安症状はパニック発作などの突然出現する自律神経症状と一緒におこる不安発作と、予期不安に代表される突発的ではない不安があります。
抗うつ薬はどちらにも有効といわれていますが、開始時には一般的な副作用(吐き気や下痢などの消化器症状や眠気)に加えてセロトニン症候群や不活症候群などの可能性があり、中止時に中止後症候群が出る可能性もあります。特に24歳以下の抗うつ薬の使用は自殺念慮、自殺企図のリスクが上がる可能性についても注意が必要です。
抗うつ薬は基本単剤で、低用量から徐々に増量します。不安症に対する抗うつ薬治療はうつ病に対する抗うつ薬の効果より時間がかかる場合があるといわれています。
疾患名 | NICE(英国ガイドライン) | 日本の保険適応治療 |
---|---|---|
パニック | エスシタロプラム・セルトラリン | セルトラリン |
全般性不安 | セルトラリン→エスシタロプラム | なし |
社交不安症 | エスシタロプラム・セルトラリン | エスシタロプラム・セルトラリン |
PTSD | パロキセチン・セルトラリン | パロキセチン・セルトラリン |
OCD | シタロプラム・フルボキサミン | パロキセチン・フルボキサミン |
不安症に対する抗うつ薬の用量反応性は明確にはなっていないものの、一般には効果不十分であれば最大容量まで増量を検討します。抗うつ薬の抗不安効果は発言に6~8週かかることがあり、最大12週まで治療反応する可能性があります。
不安症の薬物療法を減薬したい
不安症に対する薬物療法の中止については、明確なエビデンスはありません。
再発リスクもあることからカウンセリングなどの精神療法を組み合わせながら徐々に減薬を進めることが多いです。当院では症状が改善し、社会機能が向上したのち半年以上安定していれば漸減中止の相談を行います。
プレゼン臨時レスキュー処方がほしい
プレゼン、会議、スピーチといった場面で症状を和らげるには、短時間作用型のベンゾジアゼピン抗不安薬の頓服が有効な場合があります。ただし、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は認知機能低下をきたし、パフォーマンスが落ちる可能性が考えられています。また、4週間以上の長期投与は薬への耐性や依存の危険があり推奨されません。症状の本質的な改善にはCBT(認知行動療法)やカウンセリングなどの心理療法が中心となります。いざというときのレスキューとして持っておきたい場合には処方のご相談が可能です。
過緊張へのβ遮断薬の効果は?
かつて過緊張の原因となる交感神経を抑えるβ遮断薬(プロプラノロール:インデラル0.5錠)をレスキューとして使う場合がありました。β遮断薬の社交不安症への適用はエビデンスに乏しく、薬物療法としては抗うつ薬SSRIが第一選択と考えられています。
あがり症・不安症 治療のながれ
不安症の治療ゴールは自律神経症状を完全に取り去ることではありません。不安症の社会生活に対する支障をきたさなくする、不安を自分でコントロールできるようにするということが不安症の治療ゴールです。
ベスリクリニックでは働く方の不安の克服とコントロールスキルトレーニングを医療からサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
「場数を踏めば」、「大丈夫と認知を変えたら」あがり症は大丈夫ですか?
あがり症に悩む人の対策として、場数を踏んだり、よく練習したり、認知行動療法で認知をかえようと努力をする人もいます。一定の人には効果があることもあれば、逆に悪化してしまうケースも見られます。ドキドキする、胸の圧迫を感じる、声がひきつるなどの身体症状が出た時に「あがり」が自覚できます。認知のアプローチで身体の反応が制御できない場合には、身体と心両面のアプローチをお勧めします。
初診はどのくらい費用がかかりますか
初診時に診断書やカウンセリングなどを希望された場合には、おおよそ10,000円~15,000円程度になります。採血やお薬の処方の有無、夜間・休日などにより費用は変動いたします。
カウンセリングは1回あたりいくらくらいですか
カウンセリングがない場合には、1,500円程度、カウンセリングがある場合には6,000円程度かかることが多いです。採血やお薬の処方の有無、夜間・休日などにより費用は変動いたします。
恐怖と不安の違いとはなんですか
恐怖は対象がはっきりしたもの、不安は漫然としたものといわれます。恐怖は自分を守るために「立ち向かうか、逃避するか(Fight or Flight)」の場合に必要生理学的な反応ですが、本来恐怖を感じる必要がないものに対して身体の反応が出る、もしく社会生活上で支障が出る(不安の症状が強く出る、逃げたくなるなど)症状があれば社交不安障害の治療の対象になります。
あがり症と社会不安障害/不安症の違い?
人目に立つと誰でも緊張します。緊張をして手に汗をかく、頭がパニックになるものの何とかその場がこなせることが多いです。例え失敗したとしても、今度はしっかりできるようにやろうとするのが上がり症です。
しかしながら、その状態に耐えられなくなり不安で休んでしまったり、集中力が低下してしまったり、出勤前に吐き気がして突然欠席したりと日常生活や仕事に影響が出る場合には、不安症・社交不安障害といえます。
とても分かりやすくいうと、不安症・社交不安障害は「ひどいあがり症」ともいえます。
不安症・社交不安障害の診断とは?
病名は診断方法により少し違いがあります。
かつては神経症とよばれ、ICD-10では不安障害や神経症性障害、DSM-5やICD-11では不安症といわれるようになりました。
主な不安症は、全般性不安症、社交不安症、パニック症があります。
いつも不安なのは全般不安症、あるきまった状況やモノが不安なのは社交不安症や限局性恐怖症、急に不安となるのはパニック症になります。
DSM-5から強迫症(OCD)と心的外傷後ストレス障害(PTSD)が独立し、この二つは別の疾患群として考えられるようになりました。
社交不安障害と脳の変化
社交不安症では、脳の扁桃体や海馬における器質的・機能的変化が注目されています。
器質的な変化としては、海馬や扁桃体の体積減少のほか、側頭葉領域、情動に関連する島皮質、眼科皮質の内側領域、表情認知に関連する紡錘状回での皮質の菲薄化が観察されています。また、機能的な変化としては、スピーチ課題において扁桃体や海馬の賦活量が大きいことが認められています。
自分でできるあがり症対策を教えてください
① 意図的にゆっくりはっきり話しましょう。
緊張をすると無意識に早口になり、気も急いてきやすくなります。
スピーチの最初の話しはじめはゆっくりすぎると自分で思うくらいが実はちょうどよいことが多いです。
② 用意をしっかりしましょう
話す内容を1度書き出してみましょう。
書き出すことで、自分の考えを明確にすることができます。
③ 話す前に腹式呼吸をしてみましょう。
人間は不安になったり、緊張すると呼吸が浅くなり肩で呼吸するようになります。
自律神経を意図的に整えることができるのが呼吸の調整です。
人間の身体は相互作用を持っており、肩で息をしているだけで緊張してくるものです。意識してゆっくりと腹式呼吸をすることで気持ちも落ち着いてきます。
- 口を軽く閉じてお腹にためる感覚で鼻からゆっくり空気を吸い込みます。
- できるだけ長く、ゆっくりはきだします。これを2,3回繰り返します。
- 体から力が抜けた後、手をぎゅっと握り良い意味での緊張を取り戻しましょう。