近年、「男性更年期」という言葉がメディアでも多く取り上げられるようになってきました。

男性更年期を疑って受診された方のうち、実際に問診や血液検査を行なって男性更年期障害と診断される方は、およそ4人に1人です。つまり4人に3人は男性更年期障害に該当せず、別の要因に対する治療が必要になります。

心療内科を中心に行っている当院では、男性更年期に該当しない場合にも、睡眠や運動、ストレスマネジメント、薬物療法を含めた、包括的な治療を行うことが可能です。

男性更年期障害(LOH症候群)とは?

男性更年期は、正確には性腺機能低下症(LateOnset Hypogonadism)と呼ばれます。

頭文字をとって「LOH(ロー)症候群」と言われることも多いです、

女性の更年期の場合は閉経の際に比較的短期間で変化が起きますが、男性の場合には加齢に伴いジワジワと変化が起きるのが特徴です。

テストステロンは、10代から20代の第二次性徴期に多く分泌され、そのあと歳をとるごとに分泌量は低下します。

特に40代から60代では、昇進、異動、転職、子供の巣立ちなどさまざまな環境変化が起きることが多く、ストレス負荷がかかりやすくなります。

男性ホルモンは加齢による変化だけでなく、生活習慣やストレスによっても起きやすくなると言われており、環境変化も男性更年期障害の原因となります。

男性更年期障害の、代表的な症状はこのようなものです。

身体に関連する症状
  • 汗をかきやすくなった
  • 頭痛・めまい・耳鳴りなど自律神経が乱れやすくなった
  • 倦怠感が出やすくなった
  • 疲れが残りやすくなった
  • 朝のスッキリ感が減った
  • 肩や背中の筋肉痛やだるさが増した
  • 手足が冷えやすくなった
  • 顎髭の伸びが遅くなった

精神に関連する症状
  • 集中力や記憶力が低下した
  • 無気力に感じる
  • 不安感が強くなった
  • 頭のもやもや感が増した
  • イライラすることが増えた
  • 仕事に集中できない
  • 忘れ物やミスが多くなった
  • 新しいことに興味が持てなくなった
  • 好きだった楽しみにやる気が出なくなった

性に関連する症状
  • 性欲が減った
  • 夜間勃起現象(朝立ち)の頻度が減った
  • セックスを楽しめなくなった
  • 勃起しにくくなった

自分で症状を確認したい場合には、

AMSスコアと呼ばれるスコアがあります。

17~26点 : 男性更年期障害の可能性は低い

27〜36点 : 軽度男性更年期障害の可能性がある

37〜49点 : 中程度男性更年期障害の可能性がある

50点以上  : 重度男性更年期障害の可能性がある

女性と同様に男性でも、更年期はホルモンの変化によって起きると考えられています。

男性の場合には、男性ホルモン=テストステロンの減少が主な原因とされています。

テストステロンの働きとは?

テストステロンは主に精巣から産生されるホルモンで、以下のような働きがあると言われています。

  • 骨や筋肉を増やし、脂肪を減らす
  • 公平性、利他性が高く、正義感が強い
  • 外界や社会への好奇心が増す
  • 空間認知力が高くなる
  • 小さなことを気にせず開き直る

一言で言うと「男らしさ」に関わるホルモンです。

漫画の主人公で言うと、北斗の拳のケンシロウ、ゴルゴ13のデュ―ク東郷、サラリーマン金太郎の矢島金太郎のようなイメージでしょうか。

また、テストステロンが高いほどさらに血管年齢が若いと言われ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを下げると言われています。

男性更年期障害の検査

男性更年期障害(LOH症候群)の診断は、問診と採血で行います。

問診では主に、AMSスコア(身体、心理、性機能の側面での状態評価)による検査を行っていただくとともに、治療の際に重要になる前立腺肥大症の症状などについても確認します。

採血では男性ホルモンであるテストステロンの他に、糖尿病の指標となるHbA1cや、薬の代謝能力を調べるために肝機能、睡眠やメンタルに影響しうる甲状腺、亜鉛などを調べます。

男性更年期障害のための採血は午前中に行いますが、

これはテストステロン値は朝が最も高く

夕方になるにつれ下がってくるためです。

男性更年期障害の治療

①テストステロン補充療法(ART:androgen replacement therapy)

男性更年期障害に対する、即効性のある治療はテストステロン補充療法です。これはその名の通りテストステロンを注射や塗り薬などで補うことによって症状を緩和させます。

一方で、

  • 副作用が出る可能性がある
  • 妊娠希望のある方には適さない
  • ずっと続ける必要がある

などといった問題点もあり、それ以外の治療を組み合わせて行うことが重要です。

テストステロン補充療法が適さない人

・赤血球増加症の方(赤血球を増やすため)

・重度の肝障害、腎障害の方(代謝時に負担がかかるため)

・前立腺がんの可能性のある方(がんの進行を早める可能性があるため)

・子供を持つ希望のある方(精子の量が減少するため)

・睡眠時無呼吸症候群の可能性がある方(症状を悪化させる可能性があるため)

テストステロンには注射製剤と塗り薬があり、希望に応じて使い分けていただくことが可能です。

テストステロン製剤による特徴

エナント酸テストステロン(エナルモンデポー)

 保険適応

 投与方法:筋肉注射

 1回250mgを3~4週毎

 費用:約1,000~2,000円/回(診察料金を含む)

メリット:効果が出るのが早い

デメリット:注射直後にテストステロンが急増し、その後減少していくので、時期によって症状に波が出やすい

②生活習慣の改善(睡眠、食事、運動など)

肥満や睡眠不足によってテストステロン値は減少するとされています。当院では保健師による睡眠衛生指導や、テストステロンを増やすための生活指導を行っています。

こんな人におススメ
  • 日中の眠気に悩まされている人
  • 健康的な食事や運動の習慣をつけたい人
  • 生活習慣によってテストステロンを増やし、活力に満ちた人生にしたい人

③ストレス対処の方法を身につける

ストレスによってテストステロンは減少すると言われています。仕事や家庭の悩みが強い場合、ストレス対処の方法を身につけることによって症状を改善できる場合があります。

誰にも話せない悩みをカウンセリングで打ち明けるだけでも、状況が良い方に向かうこともあります。当院では40人以上のカウンセラーが在籍しており、1人1人にあったカウンセリングを提案させていただいております。

こんな人におススメ
  • 休みの日もつい仕事のことを考え落ち込む人
  • 漠然とした不安があるが、何に悩んでいるかわからない人
  • 仕事や家庭の人間関係を改善したい人

④薬物療法

当院では症状に対して、薬物療法を行っています。男性ホルモンを増やすとされている漢方を処方することもありますし、精神面の症状が強い方には希望に応じて抗うつ薬や睡眠薬を使うことがあります。また、ED(勃起障害・勃起不全)を併発している方にはED治療薬の処方も行っています。

こんな人におススメ
  • 生活習慣の前にまずは症状を楽にしたい人

⑤TMS治療

うつ症状、不安症状に対してはTMS治療を行っています。脳に磁気をあてて神経ネットワークを調整する治療法で、日本では難治性うつ病に対して入院でのTMS治療が2019年から適応になっています。当院では自由診療でTMS治療を行っており、通院で治療を受けていただくことが可能です。詳しくはこちらを参照ください。

こんな人におススメ
  • 薬を使わずにうつ治療を行いたい人

⑥鍼灸治療

特に眠れない、汗がたくさん出る、イライラする、常に体が疲れている、などといった症状には鍼灸治療がよく効く場合があります。

こんな人におススメ
  • 東洋医学的に自律神経を調整したい人
  • 生活習慣を改善できないくらい気力が湧かない人

テストステロン治療は有効な治療ですが、根本治療ではないのも事実です。当院では、生活習慣の改善やストレスマネジメント、働き方や生き方について再考する中で根本的に症状を改善することが、長期的な意味での根本治療につながると考えています。

治療法については、診察にて心身の状態や希望に合わせた提案をさせていただきます。まずはお気軽にご相談ください。

来院・検査・治療の具体的な流れ

お電話(03-5295-7555)かベスリクリニックホームページのお問い合わせフォームからご予約いただけます。 

初診時には現在お困りの症状の確認と、治療方針のご相談をしていきます。

初診のご来院時か、お問い合わせ時点でメンズヘルス外来を希望している旨をお伝えいただくとご案内がスムーズです。 

お問い合わせフォームはこちらから

 

当院の受診をお勧めしない人

当院は泌尿器科の専門医が在籍していないため、前立腺肥大症の症状がある人(頻尿、残尿感、繰り返す膀胱炎など)や、前立腺がんの可能性について詳しく検査したい方にはおすすめしません。

前立腺肥大症の場合には手術をすることでテストステロン値が上昇することもあると報告されており、前立腺肥大症の検査・治療と合わせて泌尿器科の受診をお勧めします

Q&A

 ・どのような治療を実施しますか? 

→まずは、男性ホルモンの測定を実施します。男性ホルモンが低下している場合は、ホルモン補充療法を推奨します。男性ホルモンが正常の場合は、不調症状に合わせたお薬の処方や保健師による生活指導、鍼灸、TMSなどの特別外来をご案内しております。

・治療期間はどれくらいかかりますか?

→症状は患者さま一人ひとり違います。また、治療効果も個人差があり、治療期間がどれくらいかかるかについては一概にお伝えが難しいです。治療方法がいくつかあるなかで、治療期間に関しては患者さまのご要望と現状を確認してご相談させていただいております。

・治療は保険適応で可能でしょうか。

→ホルモン補充療法の、注射薬は保険適応のもので実施して治療しています。その他のお薬では、保険適応で処方できるものは保険適応で対応しております。

・注射は自己注射でしょうか。 

→自己注射はできないため、クリニックでの実施となります。

・生活指導も行ってもらえますか。

はい、保健師による生活指導を行っています。

・泌尿器科にも対応していますか?

→泌尿器科専門医ではありません。前立腺超音波検査は行っていません。前立腺癌マーカー高値の方は泌尿器科にて男性ホルモン補充療法をご案内します。必要に応じて紹介状を作成します。