グリーフケア(大切な心の支え喪失からの克服)とは?
思い出すと胸がギュッと苦しくなる、「大切な存在」を亡くしたときに心や体に影響が出ることがあります。
「グリーフ:悲嘆」とは、「大切な存在」を失ったことで生じる、深い心の苦しみを含む様々な反応を示します。
「グリーフケア」は大切な存在を失った方が別れを受け入れ、大切な存在がなくなった世界で、もう一度人生を作りあげることをサポートし、心の哀しみのケアをサポートすることをいいます。
「心の哀しみをケア」することは、「忘れる」ことではありません。
あなたのその哀しみは「大切な存在」があった確かな証です。無理に忘れて手放そうとする必要はありません。
自分の中の哀しみと一緒に存在する「大切な存在」を見つめ、想い、想いながらともに生きていく力を取り戻すのがグリーフケア外来です。
グリーフケア外来とは?
「大切な存在」との別れを認めるのは難しく、自分や周りへの怒り、後悔、落ち込みや焦りなどが強くなります。
残された人が、別れを受け止め、人生をもう一度作り未来へつなげるのがグリーフケア外来の役割です。
□~しなければならない焦燥感が強い
□大事なものに関連する日や場所で調子を崩す
グリーフは「死別」だけでなく、「失恋」や、「友人との別れ」、「病気」、「事業を手放す」、「役割を終える」ことへの哀しみも含まれます。
グリーフケア外来の治療
グリーフケアカウンセリング
「大切な存在」との別れの後、別れの事実がしっくりこない人もいれば、周りの人や環境、過去や現在に対する「怒り」を感じる人もいれば、怒りが自分自身に向かうことで「過去の後悔」や「焦り」を感じる人、そして大切な存在が抜け落ちた「寂しさ」、落ち込みを感じる人もいます。
家族や友人、お互いに知っている人だからこそ、「自分に起こった境遇や感情を話すと周囲の人を困らせてしまう」と哀しみを出すことが難しいこともあります。そのようなときはグリーフケア外来で相談をしてみてはいかがでしょうか。
「グリーフ」のゴールは「大切な存在」があったことを忘れたりするのではなく、「苦痛なく思い出すことができる状態」となり、「大切な存在」とともに生きていけることです。
「大切な存在」に向き合い、改めて自分と「大切な存在」を見つめ直し、再び自分らしく生きれるようになりたい。
そんな方をグリーフケア外来でサポートします。
グリーフの段階と経過
グリーフの経過は色々なパターン(段階説、2重課程モデル、4段解説、5段解説、9段解説、12段解説)が示されています。
多すぎてもわかりづらいため、5段解説でグリーフの段階を示します。
ショック期
別れから間もない頃には、「別れ」の事実を受け止められず、哀しみもわかない状態になります。
衝撃などは感じるものの、哀しい別れのはずなのに、哀しみを深く感じられない自分を変に思うこともあります。
□感情が薄れる感じがする
□自分が自分じゃないように感じる
必要な行動を淡々とできる人もいれば、ぼぉっとする日々が続く人もおり、適切に「哀しみ」がでない自分を心がないように思う人もいます。
淡々とできる一方、緊張感が強く、過敏な状態でもあるのがこの時期です。
なにかをきっかけに漏れ出してしまいそうな感じがする、そんなギリギリの状態で活動をしている人もいます。
喪失認識期
「別れ」を認識し、本格的な悲しみの時期です。「大切な存在」との大切な思い出がフラッシュバックするなど、関わりがあったものの多くが哀しみのきっかけとなりうる辛いときです。
□物事に集中できないのに、進まなくてはいけない感じがして焦る
□夢見が悪く、寝付けなくなったり、途中で起きることが多くなる
「大切な存在」を思い出すものに近づけなくなったり、近づくと心身に反応が出たりすることもあります。
「大切な存在」を思い出さないように「~しなければならない症候群」となって動き回ったり、大きな感情の波が起こることで周りの人や環境にイライラしたりして疲弊をしやすい時期でもあります。
「大切な存在」との別れを背負って強く生きていくために、「もっと~しなければ」と、無理に頑張りつづけたり、ガス欠になって体力が尽きて寝込んだり、思うようにいかない自分自身が情けなくなったりします。
「哀しみ」を行動や感情で紛らわせ、こみ上げる哀しみに蓋をしている可能性もあります。
やりすぎとあきらめをくりかえし、イライラと焦燥感が大きく募っていく方が多いです。
引きこもり期
喪失認識期を過ぎると慢性的な落ち込み、抑うつが強くなり意欲がわかない引きこもり期に移行します。
□落ち込みが強くなり自分を責める
□不眠、食欲の低下、頭痛、倦怠感、胸のつまりなどの身体症状がある
この時期は感情や心の症状だけでなく体の症状もでやすくなります。
引きこもり期が続くと心身の不調が強くなり、心の病気に移行する可能性もあります。
必要に応じて専門家に相談することでつらい症状を和らげることができるかもしれません。
癒し期
落ち着いて日々を過ごせるようになる時期です。寂しい感覚や、足りない感覚が全く無いことではありません。
受け入れて生きていく、そんな気持ちをやっとこの時期に持てるようになることができます。
再生期
受け入れて生きていく、過去の情報よりも現在や未来の情報が自分の中に占める割合が大きくなっていく時期です。
だからといって、「哀しみ」が全くなくなるわけではありません。
「哀しみ」もあるけれど、「大切な存在」がもたらした人生の意味や、感謝が浮かんでくる。
「大切な存在」とともにだんだんと自分らしく生きれるようになるのがこの時期です。
グリーフの段階に合わせたグリーフケアサポート治療
「グリーフ」には段階があります。その各々の段階に合わせた「グリーフケア」を行っています。
グリーフケアサポート治療 睡眠・生活トレーニング
ショック期から喪失認識期には「大切な存在」との思い出が思い起こされることが多くなります。
後悔や落ち込みが続くと、睡眠は浅くなり、交感神経優位になり眠りづらくなります。
「大切な存在」がありありと夢にでてきたり、途中で起きることが多くなったり、十分に心身を休める状態でなくなっていきます。
熟眠感がなくなり、自律神経が不安定になり、頭がぼうっとする症状が出てくることもあります。
例えば以下のような場合にはグリーフケアを行う土台を作る睡眠・生活トレーニングを先に行うことをおすすめします
□途中で起きてしまうことが多くなった
□朝起きてから4時間後にぼうっとする
□胸のつまりや頭痛など自律神経の不調が出てきた
残された人は、特定の人や、お酒や、お薬など依存できるものに依存しやすくなることもあり、お薬をつかうことが不安だと相談を受けることもあります。
当院では、薬に頼らず自分の力で睡眠リズムを調整し眠れるようになる睡眠トレーニングを行っております。
グリーフケアサポート治療 薬に頼らないTMS治療
喪失認識期から引きこもり期にかけてうつ症状が顕著になると自分自身を冷静に客観的に見ることが困難になります。
「グリーフ:悲嘆」は「大切な存在」の後にみられる反応ですが、世界が虚しく見えるようになり、なにをするにも面倒で億劫になり、悲しみに向き合う気力もない、そんな状態が続くと心身の不調が強くなります。
このような状態がずっと続くと、グリーフケアはなかなかうまくいきません。
例えば以下のような場合には抑うつ症状が強いため、抑うつの治療を先に行うことをおすすめします
□気づくと別のことを考えてしまう
□感情のコントロールが不安定になり、勝手に涙が出てくる
□人と会うことに体力や気力をつかいすぐに消耗してしまう
□集中力が低下して頭にモヤがかかる
TMS治療とは、磁気による薬に頼らない治療です。抑うつ状態に対し、抗うつ薬よりも効果があり、副作用が少ない治療として2019年に保険診療になり、新しい治療として注目されています。
こころの薬の副作用に不安があり、薬を使いたくない、自分で自分の状態を冷静にみることができない、だれかに自分のことを話すことさえ辛いような状態のときに、まずカウンセリングや生活ができる状態へ整える薬に頼らない治療です。
よくある質問
グリーフケア外来はどんな人が対象になりますか?
「突然の死・急病・事故」、「パートナーとの別れ」、「家族、友人との別れ」、「長年愛情を与え、愛情をもらったペットとの別れ」、「やっと授かった赤ちゃんの死産・流産」、「時間がないまま決めた、周りの意思に基づいた中絶」、「怪我や病気による生活の変化」、「失恋」、「どうすることもできず事業を手放した」、など様々は「大切な存在」との別れを経験した方が対象になります。
グリーフによりどのような症状がでますか?
グリーフの反応は、心の反応・身体の反応・行動の反応・認知の反応に分かれます。
心の反応は、寂しさ・哀しさ・落ち込み・いらだち・罪悪感・現実感の喪失などがあります。
身体の反応は、不眠・食欲低下・頭痛・呼吸のしづらさ・声の出づらさ・疲労感などがあります。
行動の反応は、泣く、ひきこもる、なにかに依存する・過活動・仕事への打ち込みなど現実逃避・思い出すシチュエーションやもの・人からの回避行動などがあります。
認知の反応としては、思考・判断力の低下・注意の障害・同じことを考えて先に進まない・決断力低下などが認められます。
心身の不調よりも仕事の影響で自分の不調を自覚する方もいます。
集中力低下や決断力低下がでている場合には専門家に相談をしてみることもよいでしょう。
なぜグリーフが人によって異なるのですか?
グリーフは、個人の思考、環境の差が大きく影響します。
以下のような要素でグリーフの大きさは変わるとされています。
- 生育環境
- 現在の周囲の状況や環境
- 別れる前の関係の深さ
- 宗教的背景(信仰の有無、信仰心の程度、宗教の教養)
- 別れた理由
- 人生観にかかわる割り切り方
各々に異なる人生の背景があり、ある人にとっての哀しみは、別の人にとっては別の哀しみであり、そのつらさはご本人しか感じることも知ることもできません。
ある人にとっては、「別れ」は過去に大事にしていた関係性、感情、記憶だけでなく、現在の仕事や現在の人間関係、未来のキャリア、ライフプランに影響することもあります。
「別れ」が一つの過去の出来事ではなく、過去から現在、現在から未来にまで継続的に喪失を繰り返す人もいるのです。
ペットロス症候群とは?
大切にしていたペットを亡くし、ペットを思い出す場所やものをみるとつらい、頭がぼーっとして集中力が低下してしまう状態などが起こることもあります。
ペットとの別れによる離別の反応をペットロス症候群といいます。
ペットロスに対するグリーフケアはできますか?
特にコロナ禍で周りの人との交流が薄れ、ペットが心の拠り所になっている人が増加していました。
ペットの死は自分の子供を失うほどに辛く、グリーフケアを必要としている人が多くいらっしゃいます。
人間よりもペットの寿命は短いことが多いです。いつか離れるときが来るのはわかっていたけれど、かけがえのない日々をもたらしてくれたペットを大事に想うこと、悲しみ、後悔、感謝様々な感情で圧倒されることもあるでしょう。
そのような感情の整理をするのがペットロスに対するグリーフケアです。
グリーフケアは、「大切な存在」を忘れて新しい人生を歩むためのものですか?
グリーフケアは忘れるためのものではありません。
「大切な存在」を大切にしていた自分の想いと時間は誰に奪われるものでもない、あなたの大事なものです。
大事なものを振り返り、大切にすることは、あなた自身を大切にすることにつながり、未来に向かって歩むことができるエネルギーや、人としての成長につながります。
大事なものを無理に忘れようとする必要はありません。大事にしたかったものを大事にできる安心をまず自分にわたしてあげましょう。
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