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TMS
薬に頼らない 磁気刺激治療

2019.5.28

TMS基本情報

「日本のTMS保険診療について」

2019年6月「TMSが保険診療化」されます。しかしながら対象となるのは、「1剤以上の抗うつ薬で効果が得られなかった方」などであり、全体の3割程度の患者さんしか適応になりません。保険適応されても、TMS治療の恩恵を受ける人は限定的であると考えます。

当院では世界におけるTMS治療の最前線治療対象領域とその適応、非適応基準に従って、今回の保険診療適応とならない方もTMS治療を受けられるように、TMSセンター長を中心に分析を重ねながら「日本人に合わせたTMS治療」を行ってきました。

一つの社会的な視点として今回の制限が大きいTMS保険診療化をみると、「医療費増加」、「不適切なTMS治療の抑制」という2軸の狙いがあったと考えます。当院のような世界におけるTMS治療の最前線治療対象領域とその適応、非適応基準に従ってTMS治療の適応を保険診療で広げると、「医療費増加」は避けられず、TMS治療に明るくない医療者がTMS治療を行うと「不適切なTMS治療が広がり、コントロールができなくなる」という問題が発生すると考えます。

また、治療を受ける患者さんから「毎日バス20分は通えない」、「1日1時間治療でつぶれるのは続けられない」、「TMS治療の予約が連続で取れない」という声もあります。当院では、「山手線神田駅徒歩3分程度」「1治療、来院から帰りまで30分と働きながらの方でも治療ができるTMS」と、患者さんがTMS治療の恩恵を受けやすいように日々ブラッシュアップしています。

非薬物療法のTMS治療とは?

 

TMS治療は薬物療法と電気けいれん療法の間にある治療と位置付けています。

お薬で自分の状態に効果がえられない方や、電気けいれん療法は記憶が飛んでしまうのが困る、身体の状態が不安定で麻酔がかけられないという方も受けられる治療となっています。

ただ、週5回の治療を4~6週連続で継続する必要があるという患者さんの負担などのデメリットはあります。そのため当院では「働く人に合わせたTMS治療」という軸で、学術的な視点からTMS治療の刺激方法や治療機器の工夫をこの数年積み上げ続けています。

保険診療化をどのようにみますか?

適切な保険診療化だったと考えています。

TMS治療はアメリカやヨーロッパでは、中等度以上のうつ病に対する標準的な治療の一つにすでになっています。保険診療化されたことでTMS治療が日本でも標準的な治療の一つとして認識されるという大きな一歩となりました。

今回の保険診療は、対象の患者さん、施設基準、刺激方法の制限はあるものの、「TMSを適切に日本に広める」という軸からは的を得た保険診療化だったと考えています。

一部の医療者からはTMSは『打つだけ』のような声があります。私も初めてTMS治療を知った時は懐疑的に感じました。

しかしながらこの数年、「日本人に合わせたTMS治療」を試行錯誤しながら作り上げ、当院での日本人に対する600以上の症例をもって分析したところ、TMS治療は適当に『打つだけ』では治療効果は乏しく、実は大変繊細な治療だということがわかりました。

私は、ハーバード大学TMSコース修了し、医師として世界におけるTMS治療の最前線治療対象領域とその適応、非適応基準に従って当院のTMSチームと一緒にTMS治療を構築しています。

当院のTMSチームには、精神科教授、神経内科認定医、麻酔科専門医、臨床工学技士がおり、各々の専門性をもって協議しながら「日本人に合うTMS治療」を組み立て、数年かけて洗練化をしてきました。日本に専門家がほとんどいない中、運よく鬼頭先生をはじめ、これ以上にないTMSチームの知見を統合することができています。

TMSはまだまだ新しい技術です。慈恵医大の先生方や、ハーバード大学を経由した世界のネットワーク、また世界で臨床に置いてTMS治療を実践してきた先生から指導を受けながら「日本人にあわせた適切なTMS治療」を構築しています。導入初期と比較し、30%を超える治療効果の改善がみられるなど、現在は初期とはくらべものにならない精度の治療を行えるようになっています。

日本精神神経学会は「適切なTMS治療」と「エビデンスを集積する」という使命を持ってTMS治療の保険診療化を進めてくれました。

しかしながら、日本に専門家が少ない中、もし制限を持たない保険診療化で、保険診療を契機にTMSに明るくない治療者がTMS治療をすることになれば、適切なTMS治療がなされないケースも出てくるかもしれません。

エビデンスを作るためには、順番が重要です。治療も対象も不安定では、しっかりしたデータは作れません。まずは医療者側の治療基盤を整えるという意味で小さくても確実にしっかり広がり、洗練化、標準化されることがケースの拡大よりも先に重要だと考えます。

適切なエビデンスを国や医療界がつくっていくために、そして保険診療の維持のためにも、対象から外れる方達の受け皿が必要と考えています。「保険診療に見合う高い質をもつTMS治療」「患者さんがTMS治療の恩恵を受けやすい」ようになる受け皿として、私たちはTMS治療を今後もブラッシュアップしていきます。

保険治療としてTMS治療が広がることをどう思いますか?

一人のTMS治療者としてTMS治療が日本に広がることは喜ばしいと感じています。

当院は入院施設がないため自殺企図がある方や精神状態がかなり悪い状態の方など、地域の中核病院での治療が適した患者さんは速やかに地域中核病院にご紹介するという決まりがクリニックにあり、治療をお断りさせて頂いたり、病院を紹介させていただいておりました。

しかしながらTMS治療ができる病院は限られた病院しか今までご紹介ができず、家から遠い病院を紹介され、結果離脱してしまうというケースもあり、心苦しく感じていました。今回の保険診療化で連携できる病院が増え、患者さんがより治療を受けやすい環境となることは非常に嬉しく感じています。

TMS治療のセカンドオピニオンを受けることも多く、複数人の同じクリニックに通われた患者さんからお話しを聞くと、必ずしも「適切なTMS治療」が行えているクリニックは多くはないと感じています。

TMSとはどのような治療なのか、どのように治療をすすめていくのかなどの的確な情報提供、外来でのTMS治療には、本人の心身の状態、仕事の状態、家庭の状態なども含めて<Shared Decision Making>で患者さんと一緒に治療を検討していくことが非常に重要になります。 

このクリニックは「2030年の日本の医療」を現場から作り上げることを目指して5年前に協同で設立しました。当院でのTMS治療は「2030年の日本の医療」に必要な一つの医療として導入しています。今後の日本、そして世界の医療の未来に、必要不可欠な治療と考えます。そのためにも、適切なTMS治療が日本へ広がることを願っています。

TMS情報まとめ

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